海外赴任者の健康を守るために企業が準備しておくべきこと

海外進出をしている企業の人事・総務担当の方に読んでいただきたい記事です。

海外子会社では、ローカル社員にまかせっきりにするわけにもいきませんから定期的に日本から出張したり、時には現地に駐在することになる場合の社員の健康をどう確保するかも考えておかなければいけない重要なことです。

それは、環境や食べ物が日本にいる時とは全く違い、生活が乱れることによって体調を崩しやすくなりますし、外国には、現地の特有の病気もあって、日本では感染することのない細菌やウイルスなどに感染する危険性も。

安心して外に出歩けず運動不足になったり、単身赴任で食事が偏って生活習慣病になるリスクも考えられます。

現地の風習での生活変化による体調不良もあり得ます。例えば中国では宴会で食べきれないほどの料理が並びますし、浴びるほどに酒を飲みます。

仕事もプライベートも慣れない環境で生活しなければいけないんで、ストレスがたまり精神的に参ってしまうことだってあるでしょう。

そうした時に日本であればすぐに病院にかかれますが、海外では医療レベルや医療環境が低いことや言葉の問題があって思うように受診できないことも考えられます。

しかしながら、様々なリスクがつきまとう海外勤務にも関わらず、赴任してしまったら労働安全衛生法の範囲外になってしまいますから各企業の努力で現地で安心して生活できるための制度を整えておかなれければなりません。

はるか昔みたいに「とりあえず行って、何とかうまいことやってこい」という時代ではありません。

そこで、この記事では海外進出型企業が海外赴任者に対してどのような健康確保策を実施すべきなのかを産業保健歴10年以上の薬剤師が解説します。

予防接種で感染症への予防対策を確実に準備

海外では日本ではほとんど感染しない感染症が蔓延していることがあります。

例えば発症すると致死率100%の狂犬病も日本ではほとんど感染リスクはなくても海外では普通に感染してしまいます。

日本で生活する上では不要であった予防接種も海外赴任する前には確実に受けられるように企業は体制を整える必要があります。

それは予防接種に力を入れている近隣の病院と提携しておくということです。

さらに予防接種は同じものを2回、3回と接種しないといけないものもありますし、1つずつの予防接種は1週間以上(ワクチンによっては4週間)間隔をあける必要がありますから、スケジュールに余裕を持てるようにすることも重要。

日本で受けられる予防接種は次の8種類ありますが、その中で私が接種をオススメしたいのが破傷風、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎、インフルエンザ、狂犬病です。

破傷風(オススメ)

破傷風菌に感染すると発症する病気で、世界中の土から感染するリスクがあります。

破傷風は感染すると死に至る可能性が高く危険な感染症ですが、予防接種を受けることでほぼ予防できる感染症であり是非受けられるようにしたいものです。

A型肝炎(オススメ)

日本ではあまりなじみがないウイルス性の感染症ですが、途上国など不衛生な食べ物で感染します。

通常は、胃腸風邪のような症状で出るだけでたいしたことありません。

でもまれにひどい肝炎が起こって命にも関わるので、感染がほぼ予防できる予防接種は受けておくべきです。

B型肝炎(オススメ)

ウイルスが血液や体液(性行為)から感染します。

感染ルートからするとあまり感染リスクは少ないように思えますが、医療水準が低い病院などで怪我の治療や輸血を受けると感染する可能性が高いです。

感染すると肝癌や肝硬変などになるリスクが高まって命にかかわります。

これも予防接種でほぼ予防できますのでオススメです。

日本脳炎(オススメ)

ウイルスによって起こる病気で、蚊を介して感染します。

田舎の農村部で感染しやすく都会であればリスクは低いですが注意しておくべきです。

子供の頃に予防接種していると思いますが、予防効果が薄れている可能性があるので海外赴任前の接種をオススメします。

インフルエンザ(オススメ)

毎年流行する型が異なりますので、毎年予防接種を受けておくべきです。

狂犬病(オススメ)

犬などの動物(哺乳類全般)に咬まれることで感染し、潜伏期間を経て発症してしまうと100%死に至ってしまう極めて危険な感染症です。

予防接種を受けたとしても完全に予防できるものではありませんが、発症を少しでも遅らせるために接種しておいた方がいいでしょう。

狂犬病の詳細は次の記事で解説していますので参考にしてください。

https://industrial-pharmacist.com/?p=966

コレラ

残念ながら日本ではワクチンは販売されておりません。

病院によっては海外で発売されているワクチンを取り寄せて接種できるところがありますが、残念ながら予防接種を受けてもあまり予防効果が高くありません。

南米やアフリカの一部の国では入国時に接種が必要なことあるので、その対象になった場合を除きオススメしません。

黄熱病

このワクチンも一般的な医療機関では予防接種を受けることができません。

入国する時に予防接種を受けている証明が必要な国に渡航する場合のみ、空港にある検疫所で接種することになります。

黄熱病の詳細は次の記事で解説していますので参考にしてください。

https://industrial-pharmacist.com/?p=474

感染症予防のために啓発しておくべきこと

開発途上国では衛生環境が整っていないことが多いので食中毒に注意が必要です。

生食しないなど食事に気をつけなければなりません。

割と見逃してしまうのが「氷」です。飲み物に入っている氷にも注意が必要です。

また、熱帯ではデング熱やマラリアなど蚊を媒体にした感染症が流行する場合がありますので、虫除けだとか蚊帳など蚊にさされない工夫も必要になります。

https://industrial-pharmacist.com/?p=203

さらに池や湖などにいる住血吸虫など寄生虫にも注意が必要です。

https://industrial-pharmacist.com/?p=504

日本にいるとあまり気にしない/気にならないことも海外ではとても重要なことがあります。

赴任先で発生している感染症やその対処法についての情報をしっかり把握しておき、海外赴任者に周知しておくことが必要です。

治療薬の準備も必要

治療薬と言っても風邪などの家庭常備薬として備えるものと、高血圧治療などの慢性疾患治療薬として日常的に使用するものとがあります。

それぞれについて解説します。

体調不良時に服用する薬は現地で準備できるようにしよう

海外の薬は用量が大きすぎて日本人には合わないことがあります。

確かにその場合はありますが、実際のところそれほど気にすることはないので、現地で必要な薬を購入すれば問題ありません。

ですが、これは薬のことを良く知っている薬剤師としての意見です。

そう言っても本当に大丈夫なんだろうかとやはり不安になると思います。

そのために日本の薬を会社で渡す(費用を払う)のも手ですが、物質主義は少し古い考え方です。

少し手間はかかりますが、ローカル社員にも手伝ってもらい、赴任先で販売されている各症状に効く代表的な薬のデータベースを作り、日本人が安心して服用できる飲み方の対応表を作成しておくことをオススメします。

成分名が分かれば日本の産業医からアドバイスをもらえるでしょう。

これは会社で薬を準備するのは中々ハードルが高いってこともあってのことです。

会社で薬を配るよりも現地で自分で購入できる仕組みを考えた方が良いでしょう。

https://industrial-pharmacist.com/?p=12

高血圧などの慢性疾患への治療薬

3~6か月分くらいで定期的に日本に帰国できる機会あれば日本の主治医にその期間分の処方を受けておけば問題ありません。

日本の健康保険制度の関係でそれ以上は処方してくれません。

しかも薬を海外に持っていくにも注意すべき点がいくつかあります。

https://industrial-pharmacist.com/?p=1108

そこで年単位となる海外赴任では、現地で治療を受ける手段を確保しておくことが重要。

そうは言っても異国で日本語以外の言語で医療機関を受診するのは結構ハードルが高いと思います。

最近では様々な国で日本人医師がいたり日本語通訳がいたりしますので、そのような病院をリストアップしておくことも必要。

例えば、アジア系ではSOSクリニックが有名です。

健康診断も定期的に受けておくべきなので、現地の病院検索は必須事項かと。

海外赴任中の健康に関する研修・教育も考えよう

予防接種や薬のこと以外にも海外生活をする上での生活習慣に関する研修や教育も重要です。

赴任者任せでは企業としては少し無責任。

健康管理をするために必要なことをまとめた冊子を配布したり、イントラネットで配信するだけでは赴任者の意識は上がらず無駄になりがちですから、できれば対面で研修・教育することも重要ではないかと考えます。

社内の産業医や保健師が行えればベストですが、マンパワーの関係で難しければ研修を請け負ってくれる業者と契約することをオススメします。

海外赴任者の健康に関する研修をする業者は、心と体の両方の研修もありますし海外赴任中の電話相談なんかにも対応していて、海外赴任者の健康管理について全般的に網羅できます。

例えば、こんな業者があります。

まとめ

海外赴任として長期間海外に渡航する際は、感染症予防、体調不良時の薬の準備、生活習慣病予防、ストレスマネジメントが国内で働いている時よりもさらに重要度が増します。

健康は、仕事をするにしても遊びをするにしても土台となるものです。

特に海外赴任して仕事をするような優秀な方であればなおさらのこと。

会社として放置しておくべきことではなく、多少コストがかかっても万全の体制を取っておくべきでしょう。

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