花粉症の不適切な治療が与える企業への損失 健康経営での取組みテーマ

例年3月から4月頃にピークとなるスギ花粉症は、戦後に植えたスギが熟成して大量に花粉が飛散することになったり、日本の衛生環境が向上してアレルギーに対して敏感になっているなどの理由によって患者は増加しています。

私が子供頃には花粉症だとかアレルギー性鼻炎で困っている人はそれほど多くなかった印象ですが、今や逆に花粉症ではないことの方が珍しいのではないでしょうか。

花粉症は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった集中力を低下させる症状のため、労働者にとっては生産性低下、事故及び災害の発生リスク増加させることになり、患者数が多いことからも企業としては見過ごすわけにはいかない病気だと考えます。

花粉症の治療方法

花粉症の治療薬は多くの種類があり、次に示すものがメインとなります。同じ種類でも内服薬、点眼薬、点鼻薬として発売されていますものもあって、これらを組み合わせて治療が行われます。

  • 抗ヒスタミン薬(内服・点眼・点鼻)
  • 抗ロイコトリエン薬
  • Th2サイトカイン阻害薬
  • 抗PGD2・TXA2薬
  • ステロイド薬(内服・点眼・点鼻)
  • α1遮断薬(点鼻がメイン)
  • 免疫減感作薬

医師が主に使用する治療薬

医師が治療の際に参考にする『鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年改訂)』によると、軽症から重症までいずれの症状の方にメインで使用されるのは、抗ヒスタミン薬の内服薬と点眼薬、ステロイドの点鼻薬になります。

それぞれ複数の薬が発売されており効果や副作用が微妙に違いますから自分に合った薬を医師と一緒に探す作業を行います。

昔は症状が出る前から予防的に服用を開始した方が良いとされていましたが、現代で使用される薬は効きが早くて症状が出てから内服を開始してもしても全くと言っていいほど問題になりません。

ただ花粉が飛散している間は症状が緩和されてもずっとのみ続けていた方が飛散のピーク時期で症状がひどくならなくてすみます。

なお、メインで使用される抗ヒスタミン薬の内服薬とステロイドの点鼻薬は、現在でも病院でよく使用される成分のものが市販薬として発売されています。

花粉症の症状で仕事に集中できないけど、忙しくて花粉症ごときではなかなか病院にいけないアナタは、薬局やドラッグストアで効果の高い薬を購入してみるのも手です。

https://industrial-pharmacist.com/?p=484

抗ヒスタミン薬で注意が必要なインペアード・パフォーマンス

インペアード・パフォーマンスとは、気づきにくい能力ダウンという意味です。

抗ヒスタミン薬はアレルギーに関与するヒスタミンの働きを抑えて花粉症の症状を低減させますが、ヒスタミンは脳の活性物質でもありますので、脳内のヒスタミンの働きも悪くなって脳の働きが鈍くなることが知られていて、副作用として眠気が出るのはこのためです。

インペアード・パフォーマンスは、脳の働きが悪くなって眠気がある感覚はないけど集中力や判断力が無自覚なまま低下してまうことです。

作業効率の低下、生産性の低下、事故や災害の発生リスク増加など、花粉症の治療をしているにも関わらず無治療の場合と同じようなリスクが発生してしまう可能性があるため薬選びは重要です。

自分に合った薬で治療

脳へ移行しやすい・しにくい抗ヒスタミン薬は実験的に検証されていますが、本当に日常生活や仕事へのパフォーマンスに影響を与えるかは実は分かりません。人間の体は複雑で人それぞれ違いますので、理論的なことと現実的なことが違うことが十分あり得るためです。

インペアード・パフォーマンスは、抗ヒスタミン薬アレグラ錠の製造会社であるサノフィ社が提唱しているものです。

アレグラ錠は医療用医薬品の説明書(添付文書)に唯一眠気に関する注意事項が無い抗ヒスタミン薬で、脳に到達する薬の量が低いことが知られています。

ただ、そんなアレグラ錠でも服用すると眠くなるという方もおりますし、多くの方に眠気を起こさせてしまう抗ヒスタミン薬アレロック錠では全然眠くないという方もいるのも事実です。

眠気やインペアード・パフォーマンスの点から初めて花粉症の治療薬を服用するのであれば、まずはアレグラ錠から開始することがベストとは考えますが、全員に対して一番いい抗ヒスタミン薬とは言えません。

抗ヒスタミン薬は医療用医薬品でも市販薬でも多くの種類が販売されていますので、医療用であれば医師に相談しながら、市販薬であればご自身で色々服用してみて効果や副作用を確認して自分に合った薬をさがしましょう。

ちなみにアレグラ錠は市販薬でも「アレグラFX錠」として発売されていますよ。

産業保健スタッフが実施すべきこと

作業環境が直接的に原因となる熱中症への対策を行っている企業は多いと思います。その対策を行うのは労働安全を担当する方がメインに行われていて産業保健スタッフはあまり関わっていないのではと推測されます。

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しかし、花粉症自体の症状ではなくて、治療薬を服用してからの危険性ということになると産業保健スタッフから啓蒙していくしかないと思います。

いくら作業環境と整えても労働災害が減らないのはこのためだったら目も当てられません。

また、2014年に自動車運転死傷行為処罰法が施行されて、薬を飲んで正常な判断ができない状況下で車の事故を起こすと厳罰となってしまうことがあります。

花粉症治療薬を服用している時に出張や営業で車の運転をして事故を起こしてしまったら、もしかするとこの法令が適用されていまうかもしれません。

https://industrial-pharmacist.com/?p=999

時間も人でも限られていますが、ハード面の整備だけでなく社員の健康や病気に対する知識をあげるソフト面の活動も産業保健スタッフには求められています。

最近話題の健康経営では、まさに健康意識の向上を行って社内の健康度をあげる活動で、「健康リテラシー」を上げることが求められています。

健康経営とは単に病気をならないように生活習慣を変えてもらうようにするだけでなくて、社員全員が健康・医療全体にもっと目を向けてもらう活動であると思います。

まとめ

花粉症はその症状によって、生産性の低下や事故・災害のリスクを高める危険性があり産業保健上で看過できない疾患です。

花粉症のメインの治療薬となる抗ヒスタミン薬は、脳に影響してしまい症状が感じることなく、無意識的に作業レベルを低減させるインペアード・パフォーマンスが起こる可能性があります。

アレグラ錠は一般にに脳への影響は少なくまず試してほしい薬ではありますが、全員にベストな薬ではありません。自分に合った抗ヒスタミン薬を探しておくことをオススメします。

産業保健スタッフには慢性疾患予防のための生活習慣改善指導だけでなく、社員の健康・医療全般の知識レベルを上げられる活動も必要であり、これからさらに広がっていくであろう健康経営でそのような取り組みもしていくべきでしょう。

国民皆保険のせいか、医師会のせいか、日本ほど健康や医療の知識を国民が持っていない先進国はないと思いますから、かなりタフな仕事になるのは間違えないとは思いますが!

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