ワクチン新時代 癌・高血圧の治療、禁煙・ダイエットはワクチンで

インフルエンザや破傷風などの感染症に対しては、攻撃力や防御力を高めて発症しにくくする・重症化しにくくする目的で多くのワクチンが接種されています。

麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)のように感染症に対する予防接種は、接種義務があることが多いですから馴染みが深く、ワクチン=感染症予防と思っている方は多いと思いますし、現実的にはまだそうしたワクチンばかりです。

しかし、大学病院で実際に使用されている感染症予防ではないディープなワクチンもありますし、現在開発中の生活習慣病の治療にも使用する新しいタイプのワクチンもあります。

ということでこの記事では、ほとんどの方が知らない様々なワクチンの種類とその詳しい内容について紹介したいと思います。

この記事で紹介するワクチンの一覧

  • 万能型インフルエンザワクチン
  • 癌ワクチン(ペプチドワクチン)
  • 丸山ワクチン
  • 高血圧ワクチン
  • 禁煙ワクチン
  • 肥満ワクチン
  • 糖尿病ワクチン

万能型インフルエンザワクチン

インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型の3種類があります。

さらにA型はウイルス表面のタンパク質の違いによって154種類の亜型が存在します。H1N1、H3N2、H7N9、H5N1というのはその亜型の名称のことをいいます。

通常インフルエンザワクチンは、A型が2種類(H1N1、H3N2)とB型2種類(型は同じだけど産地が違う)の合計4種類入ったものになります。

予防接種とはワクチンを接種することによって、ウイルス表面のタンパク質に対する抗体を作ることになります。

しかし、体内に入ってくるインフルエンザウイルスがワクチンに入っている型と一致しなければ、抗体は攻撃できませんので十分な予防効果が発揮できません。

そこで万能型インフルエンザワクチン(万能ワクチン)という、ウイルス表面のたんぱく質ではなくて全てのインフルエンザウイルスに共通するウイルス内部のたんぱく質を攻撃する抗体を作り出すワクチンの研究が進められています。

このワクチンがあればインフルエンザはもう怖い病気ではなくなるかもしれません。

2015年秋にマウスでの実験で成功したとのことですので、早ければ2020年くらいには発売になるかもしれません。

それよりも前に、注射ではなくて鼻からシュッとするだけで注射よりも効果が高いインフルエンザワクチンが日本でも発売されるようになると思います。

https://industrial-pharmacist.com/?p=1025

癌ワクチン(ペプチドワクチン)

癌ワクチンは、感染症のワクチンと違って癌を予防するわけではなくて癌の治療薬になります。

癌細胞を標的にした抗体そのものを投与する薬はあるのですが、癌ワクチンは抗体を自分で作り出せるようにする薬のことをいいます。

実は癌ワクチンはいくつかの種類があります。どの癌ワクチンも免疫力を高めて癌細胞を死滅させるという特徴があります。アメリカではシプリューセル‐T(商品名:プロベンジ)という薬が前立腺癌の治療で既に使用されています。

悪性黒色腫では「MAGE」、乳癌では「HER2」、大腸癌では「CEA」、白血病では「WT1」といった、正常細胞ではほとんど存在しないタンパク質が癌細胞においては過剰に見られることを利用しています。

抗体はそのような異質なタンパク質を標的に攻撃して癌細胞を死滅させます。癌ワクチンは、これらのタンパク質に似せたペプチドを投与することで免疫機構が活性化させて抗体を作り出して効果を発揮します。

日本でも「ペプチドワクチン」として、久留米大学などであらゆる癌に対する治療薬として使用可能ですが、一部の癌を除き(治験として実施中)、全額自己負担であり非常に高価な治療となります。(100万円近い)

重い副作用はなさそうですが、癌を完全に消失させる程の効力はなくて縮小させるのが限度で抗癌剤との併用が必要なようです。また毎週のように接種が必要でかなりの労力が必要です。

丸山ワクチン

日本で60年以上前から癌の治療に使用されているワクチンです。そんなワクチンがあるなんて驚きですよね。私も薬剤師になるまで存在を知りませんでした。

このワクチンも癌を予防するのではなくて癌の治療薬です。

丸山ワクチンは、厚生労働省からは医薬品としての承認は受けていない、いわくつきのワクチンです。ただ30年以上前から「有償治験薬」として厚生労働省が使用を認めている癌治療薬でもあります。

薬ではないけど厚生労働省が薬として使ってもいいことを認めているのって、この丸山ワクチンしかないのではと思います。(他にあったら教えてください)

通常治験薬は、開発元である製薬会社が費用を負担するので「無償」ですが、丸山ワクチンは治験薬でありながら患者さんに費用を負担してもらうので「有償」という点も極めて異端です。

丸山ワクチンは、主治医を経由して日本医科大学から入手可能する正式な薬で怪しくはありません。

医師が対応してくれるのであれば全国どの医療機関でも丸山ワクチンを利用した治療が可能です。

効果は、抗がん剤のみを使用していたグループよりもワクチンを併用したグループの方が15%程度延命効果があった程度ですが、これが60年以上前からずっと使用され続けていたというのが驚きです。

重い副作用はなさそうです。ただ、一日おきに接種が必要ですので、治療にはかなりの労力が必要となります。

なぜ丸山ワクチンがいわくつきの薬なのかは、どれだけの内容が真実か分かりませんが、こちらのページで詳しすぎる程詳しく解説されていますので一度ご覧になるといいと思います。

高血圧ワクチン

高血圧症の治療薬の標的にもなっているアンジオテンシンⅡの抗体を作り出すワクチンの研究が進んでいます。

高血圧ワクチンも癌ワクチンと同じく、どちらかというと予防というより治療で使用する目的で研究されています。安全な薬であることが確かめられたら、場合によっては予防薬としても使用されることになるかもしれません。

臨床試験の結果は、世界で最も権威ある医学雑誌のうちの一つであるLancet誌の2008年3月8日号に掲載されています。

初期の臨床試験ですから健康な人を対象にしている試験ですが、特に大きな副作用もなく日中血圧ではプラセボ群に比較して収縮期血圧は-9.0mmHg、拡張期血圧は-4.0mmHgであったとのことです。

接種は、0週、4週、12週の3回投与で上記は14週後の結果ですので、もう少し長く効いて効果も高ければ薬に変わる治療方法として活躍しそうです。この試験はフェーズ2aとのことですので、早ければもうそろそろ世界のどこかで発売されてもおかしくないと思います。

このワクチンとは別に大阪大学でも高血圧ワクチンの研究を進めており、2015年のアメリカ心臓協会の学会で効果が発表されています。まだ動物実験の段階ですが降圧作用が約半年も継続したとのことです。

禁煙ワクチン

当然ですが禁煙ワクチンも予防薬ではありません。

血中ニコチンを標的とする抗体を作り出して喫煙による幸福感を得られなくするワクチンの研究がかなり前から進んでいて『NicVAX』という商品名が決定しているワクチンもあれば、その他にも複数種類が研究開発中です。

NicVAXは、臨床試験の最終段階で、期待した十分な効果が実証できなかったとのことですが、追加で臨床試験を行うようでそれで良い結果がでれば、医薬品として承認が得られるかもしれません。

まだ動物段階ではありますが、最近ではNicVAXよりも効果が良く、効いている時間も長いワクチンも開発中です。いずれにしても近い将来には禁煙ワクチンが発売されて世の中から喫煙者が大きく減るかもしれませんね。

今のところは気合と根性で禁煙するか貼り薬又は飲み薬の助けを借りて禁煙する方法しかありません。

タバコの煙はPM2.5であり喫煙者は北京より危険な空気を吸っていることになります。是非禁煙にチャレンジしていただければと思います。

https://industrial-pharmacist.com/?p=408

気合と根性での禁煙成功率を1とすると、ニコチンパッチ(貼り薬)だと2に、チャンピックス錠(飲み薬)だと3になるとも言われていますので、無理せず禁煙するために医薬品の力を借りてみてはいかがでしょうか。条件を満たせば健康保険も使用できます。
参考

http://sugu-kinen.jp/

肥満ワクチン

肥満ワクチンは病的に太っている人への治療薬なんだとは思いますが、ひとたび発売されれば美容クリニックなどで予防薬として絶対に使用されるでしょ。

グレリンと呼ばれるペプチドが、食べたい気持ちを促進させていることがこの15年くらいで分かってきていて、グレリンに着目したワクチンの研究が進められています。動物段階ではありますが食べたい気持ちを抑える効果はかなり高いようです。

ただグレリンは、食べたい気持ちのコントロールをするだけでなくて、様々な場面で使われ生きていくために必要不可欠な物質です。ですから、ワクチンでグレリンの作用をブロックしてしまうと致命的な副作用が懸念されます。

このワクチンについては、まだまだ発売までには時間がかかりそうです。

ダイエットは基本的にはコツコツやるしかありませんが、どうしても薬などに頼りたい場合はDHA・EPAがおススメです。

https://industrial-pharmacist.com/?p=1283

糖尿病ワクチン

高血圧ワクチンと同じく大阪大学では糖尿病ワクチンの研究も進められています。

糖尿病ワクチンもまだ動物実験段階であるため順調に研究進んでいったとしても発売まで時間がかかりそうです。

研究が進められている糖尿病ワクチンは、DPP4阻害薬という分類の内服薬のワクチン版です。

まとめ

ワクチンと言えば感染症予防のためのものを想像しますが、癌、高血圧、糖尿病といった生活習慣病の治療の他、禁煙やダイエットまでもワクチンで治療可能な時代になっていくのかもしれません。

薬剤師的には薬を頻繁に使ってもらった方が儲かりますが、超高年齢化社会を迎えて医療費の抑制が必要な時代においては、効力が強く長い効果が期待できるワクチンに期待が寄せられていくものと考えます。

新しい薬を世に出すためには厚生労働省に認めてもらうための臨床試験である治験を行う必要があります。治験に参加することは怪しげな印象を持ってしまいますが、薬を待っている人のために行う社会的な貢献度の高い立派なボランティアです。

抗体を作り出すワクチンの治験は少し怖いですが、安心度が高いものもたくさんあります。もし少しでも興味あれば私が製薬会社に勤務していた時の経験を元に書いた記事がありますのでご覧になっていただければと思います。

https://industrial-pharmacist.com/?p=1681

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