ビフィズス菌を静脈内投与する画期的な抗がん剤

信州大学で研究されていたビフィズス菌を用いた抗がん剤の実用化を研究しているアネロファーマ・サイエンス社という会社があります。

2013年にヤフーニュースで取り上げられたいたこの会社の研究が画期的で、かなりびっくりしましたので紹介します。

ニュースのタイトルは、「ビフィズス菌を静脈内投与する抗がん剤の治験開始」です。ヨーグルトを食べると胃がんや大腸がんに効果が有りそうという話は聞きますが、まさか細菌を静脈内に投与するとは!という感想です。

ということで、ニュースの中身の紹介とニュースではあまりに情報が少なすぎましたので、深堀して調べた内容をお伝えします。

ニュース記事

ビフィズス菌を静脈注射し抗がん剤、治験を開始

官民ファンドの産業革新機構が出資する創薬ベンチャー「アネロファーマ・サイエンス」が、ビフィズス菌を利用した抗がん剤新薬の臨床試験(治験)を米国で開始した。

胃がんや肺がんなどの患者に投与して安全性や薬効を調べた上で、2020年代前半の実用化を目指す。

臨床試験は米国内の治験施設で実施している。ビフィズス菌を人体の静脈に注射するのは世界で初めてで、他の抗がん剤の薬効改善などにつながる可能性もある。28日発表する。

ヤフーニュース(読売オンライン)より転載

この研究の概要

アネロファーマは、次のことを発見してそれを応用したものになります。

静脈内投与されたビフィズス菌は、正常組織では速やかに消失し、低酸素状態にある腫瘍組織内でのみ残存・増殖する。

ビフィズス菌自体には抗がん作用があるわけでは無く、ビフィズス菌が腫瘍組織内に留まる性質を利用して効率よく抗がん剤を届けようという主旨になります。効果的なドラッグデリバリーシステム(DDS)の一つを発見したということです。

がん組織は増殖が早すぎて、がん細胞内にしっかりと血管が形成されていないため、静脈内に抗がん剤を投与しても腫瘍にはきちんと薬が行き届かないことが発生します。

また、同じ理由のため、がん細胞には酸素が十分行き届いていないことから常に低酸素状態であるということがいえます。ビフィズス菌は「嫌気性細菌」であり酸素が無い環境の方が好きなため腫瘍組織内に留まる性質があるのです。

研究中の薬について

研究中の薬は具体的には、世の中で非常に多く使用されている抗がん剤「5フルオロウラシル」を効率的に腫瘍に届けるものになります。

シトシンをウラシルに変換する酵素を持つビフィズス菌と一緒に抗真菌剤「5フルオロシトシン」を静脈内に投与することで、ビフィズス菌が留まっているいる腫瘍組織内でのみ「5フルオロシトシン」が抗がん剤「5フルオロウラシル」に変換されて、抗がん作用を期待するものになります。

         

画像左側が「シトシン」、右側が「ウラシル」です。「-NH2」を「=O」に変換する酵素を発生させるようにビフィズス菌の遺伝子をあらかじめ操作しておきます。

まとめ

細菌を静脈に投与するということがものすごく画期的です。

血液内に細菌を入れてしまい極めて重篤な「敗血症」にならないのかと心配になりますので、大手メーカーではやらないのかなと思います。

さすがベンチャー企業という気がします。

動物段階では十分安全性が確認された上で臨床試験開始ですが、臨床試験初期(フェーズ1)では特に非常な重大な副作用が起こる可能性がありますので本当に大丈夫かと少し怖い印象です。

参考

https://industrial-pharmacist.com/?p=1681

4 Comments

hashiyu

コメントありがとうございます。本ブログ初のコメントです。
そのような効果も期待できるのですね。勉強になりました!

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ちょっと遠目の関係者

ちょっと遠目の関係者です。
僕が聞いた範囲の話では、野生型のビフィズス菌では、そこに集積するだけで、腫瘍のサイズが小さくなる事は無かったということです。
犬までは腫瘍が見る見る小さくなるそうです。
そもそも、ビフィズス菌を静注すると腫瘍特異的に集積するという現象は50年以上前に見つかっており、遺伝子工学的手法を用いることが出来るようになって、ようやく抗腫瘍効果を出せるようになった、ということです。

自分が癌になったらこれを使いたいと思っていますが、ちょっと開発が間に合わないかもしれません。悲しいことです。

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hashiyu

ちょっと遠目の関係者様

ブログを放置しすぎて、せっかくコメントをくださったのに返信できていなくすみませんでした。
とても勉強になりました。このような話が実現するような頃には、超小型ロボットみたいなので、
がん治療ができるかもですね。

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