【保存版】薬・サプリによるうっかりドーピング違反を防ぐ基礎知識|スポーツ選手必見記事

「ドーピング」と聞くと、どんな手段を使ってでも試合で勝ちたい選手が自分の意志でステロイドなどの薬物を使って筋肉を増やしたり、集中力を高めたりして競技能力を高めることを想像しますよね。

でも実は、そんなことをするつもりがなくても誰しもがドーピング違反をしてしまう可能性をもっています。それは次のような身近にあるサプリや薬などによるものです。

  • 日々のコンディションを整えるサプリや健康食品
  • 病院受診した時の医者からもらう薬
  • 薬局で購入する市販薬

ドーピング検査は、オリンピックに出るようなトップ選手だけが受けるものではありません。

中学生の大会にだってドーピング検査が行われることだってあります。例えばコレ。(フェンシングの大会でのドーピング検査の同意書)

ドーピング禁止薬物を体内に入れてしまうと本来持っている以上の競技能力を発揮することになりますから、自らの意志で禁止薬物を投与したかどうかは関係なく検査でドーピング禁止薬物が見つかると試合結果が取り消されてしまいます。(特例は除く

※:持病を治療するためには禁止薬物を投与するしかないことを事前申請してアンチドーピング機構などが使用を特別に認めた場合(TUE申請が認められた場合)

しかもドーピング違反の発覚後は、長ければ年単位、短くて月単位で試合はもちろん練習などのスポーツに関わる活動をしてはいけない処罰を受けることになります。

これは投与した薬物がドーピング違反とはあなたが知らなかったとしても違反があれば違反であり、処罰の対象になってしまいます。

「不注意であっても処罰の対象」というのがポイントです。

自分の意志で筋肉増強剤などを使った時は処罰を受けて当然ですが、全く悪気なくサプリや薬を服用してドーピング違反になってしまったら悲しすぎますよね。

団体スポーツであれば一緒にがんばってきているチームみんなにも迷惑をかけてしまうことになります。

ということで前置きが少し長くなってしまいましたが、この記事はドーピングに詳しい薬剤師であるスポーツファーマシストが、スポーツ選手自身はもちろん家族など関係者全員が知っておきたい「ついうっかり」ドーピング違反をしてしまわないための基礎知識を解説します。

こうした悲しいドーピング違反のことを「うっかりドーピング」と呼びますので、これからはそのように記載して説明します。

ドーピングの禁止対象はどうやって決まるの?

筋肉増強剤などの「薬物」だけが禁止対象ではなく、持久力を上げるためにあらかじめ血液を抜いておき試合直前に抜いた血液を体内に戻すといった「方法」も禁止されておりますし、ドーピング違反が見つからないように隠す「行為」も対象です。

ドーピングの禁止薬物などは世界アンチドーピング機構が定めています。毎年1月1日に更新されて、年によってはがらっと変わることがありますので毎年確実におさえておく必要があります。

有名な例で言えば、男性型脱毛症治療薬「フィナステリド:プロペシアなど」は、前年12月31日までは禁止薬物だったのが翌年1月1日から禁止薬物から外れてしまったということがありました。

逆に12月31日に服用した薬はドーピング違反ではなかったとしても1月1日は違反になるということがあります。女子テニスのシャラポアがまさにこれでドーピング違反になってしまいましたよね。

少しおかしな話ですが、ルールですから仕方ありません。必ず今年のドーピング禁止リスト(禁止表)で確認が必要です。日本アンチドーピング機構から確認可能

うっかりドーピング違反を防ぐ方法

病院を受診する場合

体調を悪くして病院を受診する際には、医師に必ず「ドーピング検査を受ける可能性がある」ことを伝えてください

そうすればドーピング違反とならない薬を調べてくれて対処してもらえると思いますが、医師も何でも分かっているわけではありません。過去には医師が「問題ない」と判断して処方した薬でドーピング違反になってしまった選手もいますんで、次に紹介するチェックも忘れずに。

調剤薬局で薬をもらう方式の場合は、薬剤師に再度服薬しても問題ないかを必ず確認してください。

病院で薬をもらう場合は、この記事で紹介している方法を使って、服薬前にあなた自身(家族や監督も含め)でも確かめるようにしてください。

医師や薬剤師が服薬に問題ないと判断すればよっぽど大丈夫ですが、万が一ドーピング検査で引っかかった場合は、医師や薬剤師から問題ないと言われてもドーピング違反となってしまうためです。

なので、薬を服用するかどうかの最終判断は、監督や家族と相談してからあなた自身で決めてください。

薬局で市販薬を購入する場合

市販薬が、最もうっかりドーピングを起こしやすく要注意です。

なぜなら風邪薬や鼻炎薬のほとんどにドーピング禁止薬物が含まれているからです。例えば、咳を止める成分や呼吸を楽にする成分は脳を興奮状態する作用をもっています。

他にも腹痛の薬にも禁止薬物が含まれていますし、その他にも禁止薬物が含まれていることがあるので、市販薬を購入する前には必ずお店にいる薬剤師にドーピング違反にならないかどうかを確認するようにしてください。

薬剤師が全く勤務していないドラッグストアも結構ありますから、薬剤師が勤務する薬局をあらかじめ見つけとくといいですね。

おススメは「スギ薬局」です。よほど都会にあるお店でなければ薬剤師が勤務しています。

市販薬の場合も服用するかどうかの最終判断はあなた自身でしてください。

サプリや健康食品の場合

日々のコンディションを整えるためにサプリや健康食品をのむ気持ちはよく分かりますが、ドーピングの面から考えるとサプリや健康食品はやめておくべきです。

なぜなら医薬品と違って中身に何が入っているか分からないためです。パッケージに書いている成分が全てとは限りません。

外国の粗悪なサプリは、表示されていないだけで実は禁止薬物が含まれているということがあります。

特に効果が高いと評判のサプリには密かに医薬品成分が入っている可能性があり、例としてダイエット系サプリには、興奮作用がある禁止薬物が入っていることがあります。

また、サプリが危険な他の具体的な例として、ハーブの「ゼラニウム油」、「ゼラニウム根抽出物」を含むサプリがあります。これも興奮作用がある成分を含みドーピング禁止薬物の一つです。

サプリや健康食品だったら安心だと思ってのんでしまい、選手生命を台無しにしてしまう事例はたくさんあります。ドーピング違反が見つかれば、どんな理由があろうと処罰の対象になります。

どうしてもサプリを摂取したいのであれば、日本アンチドーピング機構が認可しているサプリから選択するようにしましょう。

一方で、このメーカーのように独自に製品の安全性を確認しているものもあります。

こうしたサプリであればきっと問題ないとは思いますが、万が一ドーピング違反となると何の効力もありませんから安心とは言えません。

漢方薬、栄養ドリンクはのまない!

漢方薬は、薬効成分を含む植物など(生薬と言います)が複数合わさった薬です。

しかも生薬に含まれる成分が全て分かっているわけではありませんし、同じ米でも産地によっておいしさが違うように時期や産地によって含まれる成分が異なります。

絶対に安心という保証を誰もすることができませんので、ドーピングの面からは漢方薬を服薬するのはやめましょう。

また栄養ドリンクにも漢方薬含まれていることが多いので漢方薬と同じように注意です。

サプリや健康食品でもそうですが、どういった成分が入っているか分からないものは口にしないことが重要です。

うっかりドーピングはどれくらいいるの?

日本では毎年5人くらい(検査対象者の約0.2%程度)が、ドーピング違反になってしまっています。

ですが、全員が意図的に筋肉増強剤や興奮薬などを使用しているわけではありません。「うっかりドーピング」の方も多くいます。

過去のドーピング違反の事例とその詳しすぎる詳細が日本アンチドーピング機構ウェブサイトで公開されていますので、ぜひ見てみてください。

2016年度だと4人ドーピング違反がいて、その内の1人はサッカーのJリーグ選手でうっかりドーピングでした。

まとめ

ドーピングは、競技能力を上げるためにステロイドなどを自分の意志で服薬することだけではありません。

病院の薬や風邪薬などの市販薬、サプリや健康食品からも知らずに禁止薬物を体内に入れてしまう可能性があります。

自分の意志なのか、うっかりなのかに関わらずドーピング違反をしてしまうと成績取り消しはもちろん活動停止になることもあります。長期間休むことでライバルにポジションを取られて選手生命が終わってしまうこともあります。

スポーツ選手であれば、体に入れる物すべてに責任をもって行動できるようにすることが重要です。

とは言っても薬やサプリなどを全て自分で管理するのは困難です。うっかりドーピングをしてしまう悲しい事例を減らすため、私のような「スポーツファーマシスト」というドーピングに詳しい薬剤師がいます。

全国にたくさんおりますので、いつでも相談できるようにお近くのスポーツファーマシストをこちらのページから検索しておくといいでしょう。

また、薬剤師向けではありますが、このブログでドーピング禁止薬物かどうかの調べ方を紹介した記事があります。慣れれば誰でも調べられますので、できることならあなた自身でも調べられるようにしておくといいでしょう。

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