「セルフメディケーション」は、英語で「自分自身」という意味を持つ「self:セルフ」と「薬物療法」という意味を持つ「medication:メディケーション」を合体させた言葉です。
世界保健機構(WHO)で「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。
セルフメディケーションという言葉は、薬剤師の間では当たり前のように使っているのですが、世間一般では普通ではありませんでした。
でもこれからはよく聞かれる言葉になるかもしれません。
それは、2017年からセルフメディケーションに頑張った人の所得税を軽減する「セルフメディケーション税制」というものが始まったからです。
セルフメディケーションは、健康的な生活習慣を身につけると共に医療や薬の知識を身につけて、ちょっとした体調不良であれば病院に行かずとも市販の薬で自分で治療できるようになりましょうということです。
日本の高年齢化が進み国民医療費が跳ね上がっていますから、少しでも病院を受診する人を抑制して医療費が上がり過ぎるのを抑えるのを目的に減税措置が行われることになりました。
この減税措置は市販薬をたくさん買えばそれに応じて税金を還付しますよというものですが、いくつか要件がありますし従来からあった「医療費控除」も継続されますからそれとの違いについてこの記事で紹介したいと思います。
目次
セルフメディケーションとは?詳しく解説します
セルフメディケーションとは、市販薬の知識を身につければ良いということではありません。
健康に過ごすために必要な様々な知識を身につけ、健康診断の結果をマジメに受け止めて、自ら日々の食事・運動習慣を見直して、積極的に健康管理を行えるようすることです。
健康的な生活習慣を送っていたとしても風邪を引いたり、頭痛が起きたりすることはあるでしょう。
そのような軽症の時に病院に行かなくても市販薬で治療できるように備えておくこともセルフメディケーションの一つですが、それは自分で市販薬の知識を持たなかければいけないかというとそうではありません。
「かかりつけ薬剤師」や「かかりつけ薬局」を持って、薬の専門家にいつでも気軽に相談できるようにしておき、すぐに市販薬で治療できるようにしておくことです。
このブログで市販薬の知識を身につけるものアリです。
セルフメディケーション税制とはどのようなもの?
この記事の本題のセルフメディケーション税制を詳しく紹介します。
この減税措置は、厚生労働省は次のように説明しています。
適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除する。
これでは少し分かりにくいですので簡単に言うと次のとおりになります。
ただ、どれだけ市販薬を購入したとしても上限は8万8千円までしかお給料が減ったとみなしません。
医療費控除とセルフメディケーション税制との違い
従来からあった「医療費控除」も継続されますが、セルフメディケーション税制かのどちらかしか適用できません。
実は医療費控除も市販薬の費用も対象になります。
しかし、医療費控除は家族全員の医療に関わる費用が10万円を超えた時にしか適用されませんから、セルフメディケーション税制とは、市販薬の費用に限って低額でも減税できるようになった格好です。
かかった市販薬の代金が10万円未満の時は「セルフメディケーション税制」を、病院の受診費用なども含めて10万円を超える時は「医療費控除」の適用を受けることになります。
セルフメディケーション税制でどれくらい減税になる?
所得税の最大税率は45%です。
セルフメディケーション税制で最大8万8千円分のお給料が無かったものにみなせるので、最大で39,600円の節税になります。
ですが、一般的なサラリーマンの所得税の税率は20~33%ですから、最大でも2万円くらいの節税と思えばいいかと思います。
ちなみに所得税の税率は国税庁のホームページでご確認ください。
あらゆる減税制度で同じですが、重要なのは自ら申告しなければ税金は戻ってこないことです。
毎年2月中旬から3月中旬にある確定申告をしなければいけません。
市販薬なら何でもセルフメディケーション税制の対象になるわけではない
セルフメディケーション税制の対象となる市販薬は、「効果の高い良い市販薬」です。
効果の高い良い市販薬とは、医療用薬から市販薬に規制が変更された「スイッチOTC薬」というものになります。
それは、「ロキソニン」などの医療用薬としても市販薬としても使用されている薬のことです。
対象となる薬のリストは厚生労働省から発表されています。
2か月ごとに見直されますから常に確認が必要です。
セルフメディケーション税制の対象医薬品の一覧はこちらのページをご参照ください。
また、注意してほしいのは、同じような商品名でも対象となったりならなかったりとします。
例えば昔からある「バファリン」は対象外ですが、「バファリンEX」などは対象になります。
商品名を一字一句間違えないように留意が必要です。
セルフメディケーション税制の対象となる市販薬を見分ける方法
ロキソニン、ガスターなど有名どころは分かりますが、マイナーな薬は薬剤師でもすぐには分かりません。
また同じような商品名がたくさんありますから完璧に覚えるのは難しいです。
そこで、セルフメディケーション税制の対象品であることが分かるようにした専用の識別マークが参考になります。
こんな感じで使われます
拡大するとこんな感じ
このブログでオススメの市販薬は対象になる?
薬効別に内服薬と外用薬のオススメ市販薬をこのブログで紹介しています。
基本的には医療用でよく使用されている薬である「スイッチOTC」からオススメ品を選んでおりますので、このブログでオススメしている市販薬はセルフメディケーション税制の対象となることが多いです。
しかし、蓄膿症でオススメしているような漢方薬は対象にはなりませんのでご注意ください。
このブログでオススメ市販薬を紹介している記事には全てセルフメディケーション税制の対象になるかどうかを記載していますので、必ずチェックしていってくださいね。
セルフメディケーション税制を受けるために領収書に記載が必要な5点
確定申告の際には、購入した医薬品がセルフメディケーション税制に該当しているかなどの証明が必要です。
厚生労働省が発表しているセルフメディケーション税制を使うために領収書やレシートに記載が必要な5点は次のとおり。
- 商品名
- 金額
- 当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨
- 販売店名
- 購入日が明記されていることが必要
【注意】
3.は、「商品名の前にマーク(例えば「★」)を付すとともに、当該マークが付いている商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨(例えば「★印はセルフメディケーション税制対象商品」)をレシートに記載」、または「対象商品のみの合計額を分けて記載」が必要です。
税金が安くなるので手間がかかるのは仕方ないにしても少し面倒ですね。
購入者側もきっちりとチェックしておく必要があります。
セルフメディケーション税制のまとめ
高年齢化が進み医療費が跳ね上がっている中で、自分の健康は自分で守る「セルフメディケーション」という考え方が広がってきております。
国も「セルフメディケーション税制」という減税措置を行って浸透を図ろうとしています。
この減税措置が受けられる市販薬は、効果の高い市販薬である「スイッチOTC」のみです。
成分数としてはそれほど多くありませんが、商品数だと膨大になりますから全てを覚えるのは薬剤師でも困難です。
そんな時に役立つのが識別マークです。
このマークは減税措置を受けるためのものですが、マークのついている市販薬は効果が高いと言っているのと同じですから何を購入するか迷ったらマークがついている市販薬を選択するといいでしょう。
そしてそれを購入したことを証明するために領収書やレシートに記載しなければいけないことが決まっています。
購入する際にモレがないかしっかりと確認が必要です。
確定申告が少し面倒で制約が色々と多いセルフメディケーション税制ですが、今ではわざわざ確定申告期間に税務署で並んで確定申告書を作成しなくても国税庁のウェブサイトから家で申告書を作成して税務署には提出するだけでかなり楽です。
ちょっとの手間でお金が戻って来るならやるしかないですね。
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