薬の副作用報道するならしっかりやれ やれないなら報道するな

かなり古い話ですが2013年2月末に抗インフルエンザ薬リレンザでアレルギー性ショックの副作用報告があり、1名が死亡するという報道がなされました。

まずは亡くなれた方に心よりご冥福をお祈りいたします。

さて、この報道に関して薬剤師として思うところをお伝えしたいとおもいます。

報道内容は各社だいたいこんな感じです

厚生労働省は27日、2009~12年に抗インフルエンザ薬の「リレンザ」を吸入した患者3人が、副作用とみられるアレルギー性ショックを起こし、うち1人が死亡していたと発表した。リレンザは年間推計170万人が使用している。

同省は、薬の使用上の注意書きに、重大な副作用として「ショック」を加えるよう指導した。

同省によると、家族がB型インフルエンザに感染した30代女性が、予防のためリレンザを吸入したところ、数分後に呼吸困難となり手足が硬直、間もなく死亡した。

女性には気管支ぜんそくの発症歴があり、リレンザ吸入当日には発熱と感染性胃腸炎による嘔吐もあったという。

産経ニュースより転載

周辺情報も併せて報道してほしいものです

記者たるもの私情をはさまず事実のみを報道しなければならないでしょう。ただ、周辺情報がなければ読み手に誤解を与えてしまう可能性があります。

事実、薬剤師ではない私の周りから「リレンザって危険な薬だね。タミフルもダメだし他に何があるの?」なんて言われます。

メディアの皆さんには客観的な周辺情報もきっちりと調べて、一緒に報道する必要があるのではと考えます。

例えば以下3点のような。

「重大な副作用」は直ちにキケンがあるわけではない

ビタミン剤などを除いて、ほぼ全ての医薬品には重大な副作用があります。でも全ての薬がキケンということではありません。

薬の使用上の注意書きは、医師や薬剤師などの医療関係者が見る「薬の説明書」です。最低限知っておいてほしいことが全てが掲載されています。

なので、起こりうる可能性がある副作用がたくさん掲載されています。あまりひどくない副作用は発生頻度の高いものだけが掲載されていますが、発生すると命に関わるような副作用は「重大な副作用」として発生に頻度に関係なく注意書きに掲載されます。

「重大な副作用は頻度は低いけど発生したらヤバいから気をつけろよ」の扱いなのです。

医療関係者からしてみると重大な副作用にショックが掲載されたからといっても「ふ~ん」程度なものでしょう。

ショックが起こりうるのはリレンザに限らない

リレンザ以外の他の抗インフルエンザ薬であるタミフル、イナビルをはじめ、ほとんど全ての薬では「ショック」が起こる可能性があります。

薬は人間の体からしてみたら異物ですので、誰がいつどの薬に対して拒絶反応を示してアレルギーが発生するかわかりません。

市販薬であっても死亡率や副作用のリスクは少なからず存在する

リレンザは年間約170万人の方が使用しているため、約4年間で約680万人が服用していることになります。

従ってショックは3/680万で0.00004%の発生率です。

一方で市販薬が原因で命にかかわるような重大な副作用は、年間約250人発生していると厚生労働省が発表していますので、日本の人口1億2千万人で産出すると副作用発生率は約0.0002%となり、リレンザのショック発生率の約5倍に相当します。

日本人全員が市販薬を使っているはずがありませんから、実際には分母がもっと少なくなり発生確率が上がります。

市販薬ですら決して安全ではなく一定の重大な副作用は発現します。

まとめ

リレンザに限らずどの薬にもアレルギーの副作用は発生するリスクはゼロではありません。

市販薬であっても一定の確率で副作用は発生しますし場合によっては命に関わります。

読み手も全てを鵜呑みにせず疑いの眼をもってほしいし、書き手も表現を工夫すると共に客観的な周辺情報を盛り込んだりして読み手を意識した報道にしてほしいものと考えます。

これと同じことが2016年3月にも日本で一番使用されている痛み止めであるロキソニンでも起こりました。

重大な副作用に腸閉塞が追加されたことが報道がなされましたが、ロキソニンを服用している方はリレンザの比ではない位おりますから多くの方を混乱させていました。

薬の注意書きである添付文書の「重大な副作用」に新たに副作用が掲載されるのは事実なのですが、そのことだけを取り上げてyahooニュースなので全員に知らせるのはどうかと思います。知らせるなら周辺情報も一緒に知らせて安心させる配慮がマスコミには必要です。

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