人工甘味料アスパルテームの危険性を薬剤師が化学的に解説

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会社で禁煙外来の担当をしていた時の話です。

禁煙時の口寂しさを紛らわすために飴やガムを食べたいと相談されたので、太るといけないんで「カロリーが少ない物にした方がいいですよ」と提案しました。

すると同じ方から後日、カロリーの少ない飴やガムは「アスパルテーム」が入っていて、ネットで少し調べるとあまり体に良くないってあったけど大丈夫?と返事がありました。

その時はアスパルテームが危険であると指摘されていること自体を全く知らなかったので、回答をするために色々調べましたことをせっかくなのでこの記事で共有します。

アスパルテームはアミノ酸から作られている

アスパルテームは、人工の甘味料でアミノ酸の一つ「アスパラギン酸」のメチルエステルと必須アミノ酸の「フェニルアラニン」が結合(ペプチド結合)した化合物です。

たんぱく質は多数のアミノ酸がペプチド結合した化合物であることから、アスパルテームも一種のたんぱく質ともいえます。

アスパルテームは、摂取すると体内では「アスパラギン酸」「フェニルアラニン」とメチルエステルが分解して作られる「メタノール」の3つの化合物に分解されます。

それらの内、ネットで危険視されている物質は、フェニルアラニンとメタノール

それぞれの危険性について解説します。

フェニルアラニンの危険性について

フェニルアラニンは必須アミノ酸で、人間が生きていくためには食べ物から補わないといけない大切なアミノ酸

※必須アミノ酸とは:生命の維持に必要なアミノ酸ですが、生体内で合成できないため、外部(食品)から摂取しなければならないアミノ酸です。

もちろん体への有害性はない物質です。

ですが、数万人に一人という割合で発生する先天的な病気「フェニルケトン尿症」の方には有害な物質となります。

それは、通常であればフェニルアラニンが体内で分解されて体外へ出ていくのですが、この病気の方はフェニルアラニンが体外に出ていかずに体内に蓄積されてしまいます。

主に脳で蓄積されるため発達障害を起こしてしまいます。

だとすると、自分がフェニルケトン尿症とは知らずにアスパルテームを食べてしまっては危険だと思いますよね。

しかし、フェニルケトン尿症は生まれつきの病気のため、日本では生後すぐに検査することが義務づけられていますので、その病気にかかっていることを知らない人はいません。

ネットでフェニルアラニンが危険と言われるのは、「フェニルケトン尿症の人がアスパルテームを食べたらどうするんだよ」という理論ですが、フェニルケトン尿症の方はアスパルテーム以外にもタンパク質を制限する必要があります。

アスパルテームだけが危険ってことはありません。

メタノールの危険性について

メタノールは、とり過ぎると網膜損傷によって失明する可能性がある有害物質です。

また多量の摂取で死亡する可能性もある怖い物質です。これはメタノールが分解して有害な「ホルムアルデヒド」「ギ酸」が体内で作られるためと考えられます。

少し高校の化学の話が入ってきてしまい、細かい内容になってすみませんが、アスパルテームからどのくらいのメタノールが発生するのかをみてみましょう。

アスパルテームは分量は294で、メタノールの分子量は32ですので、アスパルテーム摂取量の約10%がメタノールへと分解されます。

メタノールは、新鮮な野菜や果物、フルーツジュース及び発酵飲料にも含有され、その量はフルーツジュースで12~640mg/L、発酵飲料では1.5g/Lまでのメタノールが含有してても製品として販売してもOKとされています。

一方、ダイエット系の清涼飲料水に含まれるアスパルテームは4~79mg/100mLですので、メタノール量としては、0.4~7.9mg/100mL=4~79mg/Lであり、フルーツジュースの方が数倍メタノールを含有していることになります。

このことからアスパルテームのメタノールを問題視するのは過剰な反応と考えられます。

メタノールは確かに有害物質ですが、量を考えてみましょうということです。

参考:アスパラギン酸の危険性について

アスパラギン酸は、ネット上でも危険視はされていませんが、一応少し解説します。

アスパラギン酸は、アスパラガスに多く含まれるアミノ酸で、脳の興奮性神経伝達物質です。

脳に作用するならとりすぎると脳に良くないのではと思われるかもしれません。

しかし、アスパラガスを食べ過ぎないようにしようって話を聞いたことありませんよね。アスパラガスが危険ならとっくにテレビや週刊誌で話題になっているでしょう。

消去法的な解説でしたが、こうした理由でアスパラギン酸には体に有害なことはないと判断できます。

まとめ

アスパルテームを分解して、危険性がないことを紹介しました。

人間は食べなければ生きていけないので、安全なものだけを食べたい気持ちは分かります。

ネットに存在するアスパルテームの危険論者は、多くの論文を引用したりもっともらしく論じていますが、相対的な評価はせず理論のみで危険性を訴えていたり、通常量からは考えられない摂取量における健康障害を懸念しています。

普通の生活から摂取するアスパルテームが健康上の障害を及ぼすとは到底考えられません。

ネット上の薬だとか、健康食品とかの情報はホント信じられないような情報が氾濫していますので取扱には十分注意しましょう。

しかし、塩分を取りすぎると血圧が上がるなど、通常は安全な食品であってもとり過ぎると健康障害を起こす危険性があるように「何事もほどほどに」ですよ。

人工甘味料の体への影響はさまざまな研究がなされていますので、今後常識が変わるかもしれませんが、現段階ではこの記事で紹介したとおりです。

7 Comments

taya

いやでも実際私は吐いたんですが…
そういうあなたはMINTIA5箱食べましょう。
すぐ病院行きだから。

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hashiyu

コメントありがとうございます。
どんな安全な食べ物でも体にとっては「異物」です。
従って、人によってはアレルギーを引き起こす可能性があります。
mintiaで体調不良となる方が続出していない現状では、ただtayaさんに合わなかっただけと判断されるものだと思います。

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ジャコまる

砂糖や塩だって一気に100gも摂ったら
死の淵を彷徨うのが当たり前

過剰摂取が問題であって少量なら
特別な体質でもない限り大丈夫です

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hashiyu

ジャコまる様

コメントをくださったのに返信が遅れておりすみませんでした。

全くもっておっしゃるとおりです。
個人的には、やたらとオーガニックを推す方もどうかと思っています・・・。

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しよう

ミスがあるのでは?

12~640mL/L -> 12~640mg/L
0.4~7.9mg/100mL=4~7.9mg/L -> 0.4~7.9mg/100mL = 4~79mg/L

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産業薬剤師

しよう様

コメントありがとうございます。
ご指摘のとおりです。申し訳ございません。
(フルーツジュースのメタノール含有量は、http://www.nihs.go.jp/hse/ehc/sum3/ehc196/ehc196.pdfから引用しました)

結論は変わりありませんが、ミスのあった部分を修正させていただきました。

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