プロが解説 職場に救急箱を準備するベストな方法

会社には、負傷者や急病者に対する応急処置を行う救急用の物品を職場に用意することが労働安全衛生規則第633条、第634条で定められています。

「うちはパソコンでの仕事でしかないので怪我をすることなんてない」と思うかもしれません。

しかし、紙で手を切るとかドアでぶつかるとか普通の生活で怪我することもあり得ますよね。そういった怪我が就業時間内に発生するとなると労災にもなりかねません。

法律で応急処置する物品を用意することが決まっている以上、それがいざという時に無いということが労働基準監督署にバレるといささか不都合なことが起こり得ます。

また、地震などの自然災害の時にも多少が使えますので、必要経費だと思って是非準備してほしいと思います。

ではそのような物品をどのように入手すればいいのか、職場に救急用品・救急箱を設置する方法についてこの記事で紹介したいと思います。

職場の救急箱に入れるべき物品の考え方

労働安全衛生規則第634条では、救急用品として少なくとも次の物を備えるよう記載されています。

  • ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
  • 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
  • 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木(ふくぼく)、担架等
※副木:骨折したところを支えて固定する道具

しかし、これらが本当に全ての事業所で必要なんでしょうか。

実は私の職場の最寄りの労働基準監督署に救急箱に入れるべき物品の種類を聞いたことがあります。

その回答は、「業務内容・作業環境に合わせて決めてくれればいい」というもの。

これは、労働基準監督署や担当者によって回答が変わる可能性がありますが、例えばオフィス系の職場では、止血帯とか、副木とか重傷患者用の物品は不要ということで問題ありません。

逆に言えば、製造業の特に生産職場の場合は、ケガが多くなりがちなので幅広く取り揃えておく必要があります。

どのようなケガが起こりそうかを想定しておかなければいけません。

他に劇薬毒薬を使っている時にはそれ用の準備も必要でしょう。

救急箱用品の購入方法

絆創膏も含めて救急箱用品は「医薬品」であることが多いです。

実は医薬品の場合は、薬機法(旧薬事法)で製造から販売までがっちり規制されているので、企業医薬品を準備する方法は次の3点のいずれかしかありません。

  1. 担当者が薬局やドラッグストアに買いに行き、領収書をもらってあとから清算
  2. インターネットで個人的に購入しあとから清算
  3. 配置薬(置き薬)を法人契約し、使用した分のみ会社に請求してもらう

この中で最もオススメなのが③の配置薬を法人契約する方法。というかこれにすべきです。

それは、①と②は個人で費用を一旦立て替えておく方法③だけ会社同士のやりとりになるのが大きな理由。

個人購入した医薬品を職場で使わない方がいい理由は次のとおりです。

費用の個人立て替えは不正の温床になる

「あとから領収書で清算」という手法は、不正がおこりやすいのは想像できると思います。

プライベートで使う物が購入できてしまうためです。

臨時に1回だけ購入するということであれば領収書で清算することも悪くないとは思いますが、救急箱用品のように継続して準備するようなものとなると不正のおこりにくい方法で物品を準備すべきです。

副作用が起こった時の補償がない

薬局やドラッグストアに出向いて医薬品を購入してもインターネットで購入しても買うのは「個人」です。

薬局に行けば法人名で領収書を発行してくれますし、インターネットでも法人として購入はできるのでしょう。それで必要経費としては計上できるかもしれませんが、物は医薬品です。

医薬品はいつ・誰にでも副作用が起こる可能性があります。

ひどい副作用の場合は国が金銭面の補償をする「医薬品副作用被害救済制度」がありますが、この対象になるかどうかはかなり厳しい審査が行われます。

誰かからもらった薬であるとか、説明書通りに使ってなかったとか、適切に使用していないと認定されません。

担当者が個人的にドラッグストアやインターネット買った医薬品を職場に置いた場合はどうでしょう。

副作用が起こった際の補償はまず受けられません。医薬品を購入した担当者からもらったのと同じになりますから。

その点、オススメの配置薬を利用する方法であれば、副作用が起こった時に「医薬品副作用被害救済制度」が利用できる可能性があります。

医薬品商社(医薬品卸)やドラッグストアから法人へ直接販売してもらうことはできない?

医薬品商社は、医薬品を販売できる先が薬機法(旧薬事法)によって規制されています。

平成21年に改正された薬事法(現:薬機法)より前は、福利厚生が利用目的であるなら、医薬品卸から直接医薬品が購入可能でした。

しかし、薬事法(現:薬機法)が改正されてからは医薬品卸は一般企業へ医薬品を販売することができなくなり、企業内に診療所がない場合は、企業が医薬品卸から医薬品を直接購入することはできません。

同じ理由で薬局やドラッグストアも企業には医薬品を販売することはできません。

企業が医薬品を購入するベストな方法は配置薬

正式なルートで企業間の費用の支払いができる、副作用が起こった時に補償が受けられる可能性があることを考えると救急箱用品として医薬品を購入するのにベストな手段は、配置薬を契約する方法です。

配置薬制度のシステムは次のとおりです。

  • あらかじめ一通りの医薬品が入った救急箱を借ります
  • 必要な時に必要な医薬品を使います
  • 2~3か月に1回ある定期訪問時に使った分だけ費用を請求されます
  • 未開封品は使用期限が切れないように定期訪問時にメンテナンスをしてくれます
配置薬は、「布亀」など様々な業者がありますからgoogleで「配置薬 〇〇県」と検索するとお近くの業者が見つかります。

最大手は「富士薬品」です。全国どこでも対応可能なため、契約したい業者がなければ富士薬品がオススメ。自社で医薬品を製造している強みもあります。

特にこの会社は自然災害時には医薬品を無償提供してくれますから、地震などの天災時をも考えると活用度は高いです。

富士薬品に限らず配置薬業者の注意点は、運営方法をあらかじめしっかりと業者と決めないと栄養ドリンクとかどんどん売り込みにあいますから、そうならないよう契約前にしっかりと運用を決めておく必要があります。

定期的なメンテナンスに来られる担当者や営業所の方のレベルはあまり高くないこと多いと聞きます。

契約前には本部の方と話をしっかりとつけておくとなおよいでしょう。

ウルトラCの技として診療所開設もアリです

もし専属に近い産業医がいるのであれば、思い切って診療所を開設してみるのもいいと思います。

週に3~4日くらい産業医が勤務していれば結構簡単に診療所が開設できます。

ワンルームマンションで在宅専門の診療所を開業している医師もいるくらいです。設置基準はゆるく、県によって細かな基準は変わりますが概要は次のとおりです。

  • 診療所は、他の施設と機能的かつ物理的に区画されていること
  • 医療機関の各施設は、原則として構造上の一体性を保つこと
  • 原則として、各室が独立していること
  • 各室の用途が明示され、病室に病室番号及び定床数が明示されていること
  • 診療室等各室の標準床面積は、診察室:1室あたり9.9m2以上、待合室:1室あたり3.3m2以上

診療所があれば、医薬品卸が医薬品を販売してくれますので実にスムーズに医薬品を買うことができます。

また医療用医薬品ですら購入できますから福利厚生の幅が広がるでしょう。

まとめ

労働安全衛生法で、救急箱は職場に設置が必要です。

しかし、中に入れる医薬品を企業が直接購入する手段が少ないのが大変なところ。

担当者が個人購入すると不正の原因にもなりかねませんし、何より副作用が起こった時が心配です。

そんな時に頼りになるのが「配置薬」

救急箱内の補充や使用期限チェックなどのメンテナンスもしなくてよく災害の時にも活躍します。

どのような医薬品を取り揃えればいいのかも相談にのってくれますしオススメです。

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