プロが解説!危険物である消毒用エタノールを購入する際の注意事項

2009年の豚インフルエンザ(新型インフルエンザH1N1)が大流行した際、日本ではマスクや消毒用エタノールが薬局などの店頭から姿を消しました。

その後、企業では新型インフルエンザ流行時の事業継続計画(BCP)の策定が求められることになりました。

当然そこには新型インフルエンザが大流行(パンデミック)を起こした際の対応手段やその備えが記載され、計画の通りに行動できるよう物品の備蓄も盛り込まれているものと考えます。

食料や日用品は消費期限や使用期限さえ注意すればいいのですが、手指や物品の消毒に使用するエタノールでは備蓄する上でさらに注意すべき事項があります。

その詳細を甲種危険物取扱者の免許を持つ薬剤師が解説します。

まず最初にご注意!備蓄するエタノールの形状

消毒用のエタノールには、ジェルタイプ、ウェットティッシュタイプ、液タイプとあります。

液タイプの場合はポンプ式がオススメ。スプレー型はウイルスを吹き飛ばし、感染を広げてしまいます。

また、手指だけに使用するならどれでもいいですが、机とか物品も消毒するのであればジェルは使いにくいのでやめましょう。

多くのエタノールは危険物

危険物かどうかは濃度で決定

エタノールは、消防法では危険物第4類のアルコール類に該当します。ただ、「危険物の規制に関する規則」で60%未満のものは除外とされています。

消防法での規制なので火災になるかどうかであるため、濃度で規制が変わるのは想像できますよね。

消毒用としてのエタノールの最適濃度

ではエタノール濃度が消防法に引っかからない物を使えばいいかというとそうではありません。

エタノールが最も殺菌効果を発揮するのは、濃度が76.9 — 81.4 vol%の時です。

60%未満では十分な殺菌効果は得られませんので、備蓄すべきエタノールは危険物に相当します。

あえて濃度を低くして危険物でないことをアピールしたエタノールも販売されていますが、そんな物は備蓄する意味がないのでやめしょう。

致死率がどれくらいになるかも分からない新型インフルエンザ用であればなおさら。

医薬品、医薬部外品の違い

エタノールは、医薬品扱いの物と医薬部外品扱いの物が発売されています。

この違いは、濃度ではなく厚生労働省への申請方法であるため、医薬品ではないエタノールであっても76.9 — 81.4 vol%に調整された物であれば効果に差はありません。

医薬品として販売すれば、販売規制はあるものの「箔」がつきますし、医薬部外品として販売すれば、販売規制はなく幅広く販売できるというメリットがあり、企業の営業戦略によって医薬品とするか医薬部外品とするかは決められています。

また、医薬品の方が製造品質が厳しいと思いますので、その辺の兼ね合いもあるかもしれません。

可能であれば医薬品の方が安心でしょう。

危険物は貯蔵に規制がある

危険物は、それぞれの危険度に応じて貯蔵や取扱いをする量で規制が変わります。

危険物には第1類~6類までの大分類があり、さらにそれぞれには危険度別に細かく小分類に分かれています。

そして小分類ごとに貯蔵や取扱いを規制する量が決められており、それを「指定数量」といいます。

指定数量以上の危険物を貯蔵したり取扱ったりすることは、大変危険を伴いますので消防法で厳しく規定されています。

一方で、指定数量未満の場合は、全く無規制ではなく市町村条例で規制を定められることになっています。

ただ、私が調べた範囲ですがどの市町村でも全く同じ条例文でしたので、全国どこでも同じなのではないかと推測されます。

それによると、指定数量の20%以上とそれ未満に分けられます。

20%以上の場合は、条例で貯蔵方法やその場所の構造などが事細かに規制されており、条件をクリアするには大きな労力が必要になります。

しかし、20%未満でも条例には色々と規制が記載されていますが、ざっくりいえば「十分注意して取扱ってね」くらいで、構造などの特別な規制はありません。

こうしたことから特別な設備がない企業では、エタノールを備蓄するには指定数量の20%未満にしておく方が無難であるといえます。
参考

https://industrial-pharmacist.com/?p=259

エタノールの規制

消防法上の規制量

エタノールの消防法上の大分類は第4類であり 小分類ではアルコール類に該当します。

アルコール類の指定数量は「400L」。

特に規制無く貯蔵や取扱いができるのは、「80L未満」になります。

1L入りでは79本まで、500mL入りでは159本までです。

備蓄の具体例

手指消毒用に付属のポンプから出るエタノール量は大体3mLです。

1日5回手指消毒をするとすると500mLボトルは33日でなくなります。

新型インフルエンザが流行したら6か月は続くと思いますから1人で5~6本は必要となりますので、職場の人数から必要量を算出してください。

ただ、これまで解説したことを考慮すると1つ事業所で30人以上いる場合は、エタノールを備蓄する際には注意が必要ということになります。

エタノール使用期限後の処理

使用期限への考え方

エタノールを大量備蓄すると使用期限が切れてしまうことがあります。

しかし、エタノール自体は分解しませんので、容器の中に液体が残って入れば十分使用できます。

エタノールに限っては使用期限をあまり気にする必要はありませんが、いざという時に不安であると思いますので期限切れとなったら更新すべきと考えます。

使用期限切れ後に廃棄する場合

企業でエタノールを備蓄して、使用期限後に廃棄する場合は「産業廃棄物」で処理する必要があります。

マニフェストの作成など面倒な処理となります。

この点からも備蓄量は十分な留意が必要です。

エタノールを買い取ってくれる業者もあります

実は、産業廃棄物で処理しなくてもいい方法があります。

ホームページには記載がありませんでしたが、日本で唯一の工業用アルコールを製造できる日本アルコール産業では、備蓄しているエタノールを買い取ってくれます。

また、廃棄後にこの業者から新たなエタノールを購入するのが条件だとは思いますが、効率のいい備蓄方法の提案もしてくれますので一度相談されてはどうかと思います。

ちょっとお得に消毒用エタノールを購入する方法

エタノールだけの商品はお酒扱いのため、「酒税」がかかってしまい少し高価になってしまいますが、少しでも違うアルコールが入っていると酒税が発生しなくなります。

お得にエタノールを購入する方法とは、エタノールにイソプロピルアルコールが混ざっている商品を購入することになります。

イソプロピルアルコールも消毒効果はありますし、有毒性はありませんから全く問題ない商品になります。注射を打つ前に脱脂綿で消毒した時の臭いの元です。

まとめ

新型インフルエンザ対策として備蓄すべきエタノールは、76.9 — 81.4 vol%の濃度の物にすべきですが、それは危険物の第4類アルコール類に該当します。

そのため、消防法や市町村条例の規制を受けずに気軽に備蓄できる量は80L未満です。

備蓄を検討する際は、どこにどのように備蓄するのかを事前に十分検討する必要があります。

もし、消防法や条例の規制を受ける量を備蓄したい場合は、お近くの消防署にご相談ください。

それらが面倒くさいからといって、薄い濃度(60%未満)のエタノールにしてしまうと効果が低いものになってしまうので要注意。

使用期限切れ後は産業廃棄物で廃棄することになりますが、それが大変な場合は一度日本アルコール産業に相談されるといいと思います。

ちなみにヒビテンアルコールも危険物に該当するエタノールを含みますので、その取扱いには注意しましょう。

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