1年に1回受けなかければいけない健康診断。
ちゃんと受けてますか?忙しいからといってさぼっていませんか?
健康診断を受けた後はその結果をきちんと確認していますか?検査した項目の意味を分かっていますか?
結果通知書に書かれている総合判定や各項目の判定で、A判定(正常)やB判定(正常範囲)だったらそれで満足していませんか?
実はA判定やB判定でも注意が必要なことがあるって知ってます?
そこで会社の健康管理部門で日々社員の健康診断に関わっている私が、会社で受ける健康診断の検査項目はどういったものがあるのか、それぞれは何を確認しているのかを紹介します。
目次
健康診断結果の見方
総合判定は意味がない!各項目の結果に注目しよう
健康診断を受ける医療機関によっては、健康診断の結果通知書に「総合判定」が書かれているものがあります。
この判定基準も病院によって異なりますが、ほとんどが各検査での判定で一番悪いもので決められていることが多いです。
例えば、全部A判定で1個だけE判定があると総合判定は「E」になります。
しかもそのE判定が視力検査だっとしてもです。
本当に「総合判定」であれば、この場合はA判定又はB判定くらいになるはずだと思うんです。
そんな人より例えば全部B判定とか全部C判定って人の方がよっぽど総合的にはキケンだと思います。
なので総合判定は、多くの医療機関で無意味です。検査項目を一つずつ確認しましょう。
D判定やE判定ってどれくらい悪い?
健康診断の正常範囲とは、健康な人の95%の方が当てはまる範囲のことを指します。
逆に言えば、健康な人でも5%の方は正常範囲ではなく異常値となります。
元々生まれ持った体質でやむなくB判定とかC判定になってしまう方です。
ではその上のD判定とかE判定とは?
ほんの一部の方は本当に健康だけれども体質的D判定やE判定レベルの値になる方もおりますが、通常はD判定やE判定なら医師の診察を必ず受けて状態をしっかりと確認しなかければいけない人です。
健康診断で計る検査の特に初期の異常は、痛いとか痒いとかといった自覚症状が全くないことが多いため、体に異変が全くなくともD判定やE判定の項目があれば、必ず病院受診しましょう。
A判定やB判定なら安心?
多くの場合、A判定やB判定であれば全く問題ありません。
でも、徐々に値が悪くなっている場合は要注意。
健康診断の結果通知書は捨てずに大切にとっておき、数年単位で変化を見ることをおすすめします。
例えば次のグラフをみてください。
左は基準値を超えることがあるけどいったりきたり、右は基準値は超えていないけど右肩上がり。
現時点(各グラフの右端)での検査値はどちらも同じくらいですが、来年を考えれば右グラフの方が注意が必要ということになります。
今年はA判定だけれども、このままいけば来年は必ずB判定より悪くなることが明らかですよね。
A判定やB判定だからって全員が全く問題なく安心ではないってことです。
ここ最近体重が増えてつつあるって方は要注意ですぞ。
あと、会社によっては、健康診断結果の経年変化をグラフで表すツールを用意してくれることが多くなってきているので、まずはそういったものがないかを確認してみましょう。
そのようなツールが全くなければ、ご自身でエクセルなどで毎年結果を入力しておくといいでしょう。
会社で1年に1回受ける健康診断の検査項目の種類
「労働安全衛生法」は、社員が安心・安全に働くために会社に対してあれこれしなさいと決めている法律で、働く者にとっての味方となる法律です。
最近では有名広告代理店での事件がきっかけに長時間労働や働き方改革がクローズアップされていますが、労働安全衛生法は残業時間などの労働時間の規制も行っています。
また、健康状態によっては業務調整が必要なことがあるため、それを確認できるよう年に1回以上は健康診断を行うことが義務付けられています。
労働安全衛生法による健康診断は、社員が結核にかかっていないかを確かめるものからスタートしたのですが、今では生活習慣病に関することであったりメンタルヘルスに関することまで、社員の心身の健康管理を行うために幅広い健康診断を行うことになっています。
労働安全衛生法では、体の健康診断として次の検査項目を実施することが義務付けられています。(一部は医師の裁量で省略可)
順番に何を検査している項目なのかを解説します。
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、他覚症状
- 身長、体重、腹囲
- 視力
- 聴力
- 胸部エックス線検査、喀痰検査
- 血圧
- 血液検査:脂質 (LDL-C・HDL-C・中性脂肪)
- 血液検査:血糖(血糖値・HbA1C)
- 血液検査:肝機能(AST・ALT・γGTP)
- 血液検査:貧血(赤血球、血色素量)
- 尿検査(尿糖・尿たんぱく)
- 心電図検査
既往歴、業務歴の調査
後で紹介する検査で異常が見つかった場合、それが昔からあるものなのか、または業務内容が原因で悪くなってしまったのかを確認するための調査です。
いわゆる「問診」というものになります。
回答をする時に嘘を書いてもいいことは全くありません。
健康状態によって人事的に不利なことをするのは違法ですので、正直に回答しましょう。
自覚症状、他覚症状
これも「問診」です。
後で紹介する検査では分からない体の異常を確認するための調査です。
身長、体重、腹囲
生活習慣病の主な原因となる肥満かどうかを確認します。
身長に対して体重が重すぎないかを確認する「BMI:ボディマスインデックス」の計算も合わせて行うことが一般的です。
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が25以上の場合は肥満と判定されます。(適正値は18.5~24.9)
腹囲は内臓脂肪と関係性があると言われ、男性で85cm以上、女性で90cm以上は、生活習慣病のリスクが高まる内臓脂肪が100cm3以上にある要注意レベルと考えられています。
視力
説明不要な検査ですね。
「C」みたいなヤツの穴の開いた方向を答える検査です。
ちなみにレーザーなどの特殊な業務でも視力に影響を与えますが、パソコンなどのオフィス業務でも視力に大きな影響力がありますので、会社の健康診断の検査項目として必須です。
聴力
これも説明不要ですね。
音が聞こえるかどうかの検査です。
大きい音の出る作業をすると耳が聞こえづらくなる可能性がありますし、年をとると聞こえにくくなります。
ちなみに1000ヘルツの音は日常生活に必要で、4000ヘルツは騒音とか加齢によって低下するため、この二つの音域が聞こえるかを検査するのが通常です。
胸部エックス線検査、喀痰検査
エックス線とはレントゲンです。客痰は「たん」の検査です。
どちらも結核などの感染症を検査するものです。
レントゲンは撮影した画像を確認し、客痰はたんを培養して細菌感染していないかを確認します。
血圧
生活習慣病を計る検査の一つです。
値が高すぎると「高血圧症」という病気と判断されます。
体の隅々まで血液を行きわたらせて酸素や栄養を届けるためにある程度の血圧は必要なのですが、高すぎるのは問題です。
血管にダメージを与え、血管を硬くしたり、詰まらせたリ、破ってしまう原因になります。
体の表面にできる「タコ」は、繰り返し皮膚に刺激が当たることで皮膚が硬くなって変形したものですが、血圧によって血管でもタコと同じことが起こったらどうでしょう。
体に良くないことが起こるのは明らかですよね。
血圧が高いとすぐにどうこうなるものではありませんが、放置すると心筋梗塞や脳卒中など命に係わる病気を引き起こしかねないものです。
血液検査:脂質 (LDL-C・HDL-C・中性脂肪)
LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(TG:トリグリセライド)の3つで血液中の脂質を計るものです。
これも生活習慣病を確認する検査の一つです。
これらは生きていく上で必要な物質ではありますが、必要以上には要らないし逆に体に悪影響を与えるものです。
LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」で少ない方が良く、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」で値が高い方が優秀です。
LDLコレステロールと中性脂肪の値が高すぎる、HDLコレステロールの値が低すぎると「脂質異常症」という病気と判断されます。
また中性脂肪が高すぎると膵臓にダメージを与えてしまうこともあります。
血液検査:血糖(血糖値・HbA1C)
生活習慣病の一つ、「糖尿病」を計る検査です。
血液中の糖分も生きていく上で必要不可欠ではあるものの、ありすぎるのは血管を悪くする原因となります。
糖尿病では心筋梗塞や脳卒中も怖いのですが、それよりも失明・人工透析・足の切断の主な原因となってしまうのが怖いです。
血液検査:肝機能(AST・ALT・γGTP)
厳密に言えば違う部分もありますが、これらの検査項目は肝臓の機能を計るものです。
酒の飲みすぎや内臓脂肪のつきすぎなどで値が高くなります。
血液検査:貧血(赤血球、血色素量)
貧血がひどいとふらついたり、倒れたりして仕事をする上で危険なため検査を行います。
まれに重い病気によって起こる異常もあるので、あなどってはいけない検査項目です。
尿検査(尿糖・尿たんぱく)
腎臓の機能を確認する検査です。
これらは数値として定量的に計るものではなく、あるかないかの定性的な検査です。
なお、尿糖は糖尿病でも検出されます。
心電図検査
最も重要な臓器の心臓に異常がないかの検査です。
吸盤みたいなのが冷たくて、「ひぇ」って声が出ちゃいますよね。
まとめ
会社で年に1回受ける健康診断の検査項目について解説しました。
健康は、仕事も私生活も充実したものにするために必要不可欠な要素です。
状態が悪くなってからでは、治るものも治りませんし、治ったとしても時間がかかります。
健康診断では自覚症状となって現れない病気を発見することができます。
結果を素直に受け止め、D判定やE判定など結果がよくない方は必ず病院受診できるようにスケジュール調整をしてください。
もしアナタの部下がそうであるなら、業務配慮してあげるのも上司の重要な役割ですよ。
そして、A判定やB判定でも安心は禁物。
ここ数年の傾向によっては注意が必要なことがありますので、会社で経年比較をしてくれないのであれば自分で行えるようにしましょう。
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