2015年夏にト○タの外国人女性役員が日本では麻薬に指定されている「オキシコドン」を宅急便で日本に送って逮捕された事件がありました。
この事例では麻薬であったことや日本一の会社の役員であったことから大々的に報道されていましたが、大企業の役員でもないごく一般の方でも外国に医薬品を持っていく際には極めて慎重な対応が必要です。
やましい気持ちは全くなく病気に備えて薬を持ち込むだけなのに薬の没収や空港で足止めされたくないですもんね。
グローバル企業に勤務する海外事情に詳しい薬剤師が、海外出張や海外赴任、海外旅行に行く方は絶対にチェックしたいことを解説しましょう。
せっかくの海外出張・赴任や海外旅行が台無しにならないようしっかりと知識を身につけて、確実に準備しておこう!
目次
外国に薬を持って行く時は、何に注意が必要?
実は国によって薬物の規制が違います。
例えば、日本では市販薬で発売されている成分でも、ある国では持ち込んではいけないということもあります。
逆のケースも十分ありますし、日本は持ち込む医薬品の量でも規制をしているので許可なく大量には持ち込められません。
規制にもランクがあり、一切持ち込んではいけないケース、事前に許可があれば持ち込めるケース、医師が治療用であることを証明していれば持ち込めるケースなど本当にいろいろです。
規制の多くは常習性のある医薬品となりますが、大麻が合法の国があるように常習性の定義が国によって異なります。
従って、持って行きたい医薬品が渡航国ではどのような規制になっているのか、持ち込む場合の手続きがどのようになっているのかを事前に調査した上で前もって準備しておくことが必要です。
これは病院でもらえる医療用の医薬品のみならず、薬局に普通に購入できる市販薬でも同じです。
市販薬なら絶対に安全ということはありません。
市販薬については後でもう少し詳しく紹介します。
規制を違反して薬を持込んだらどうなる?
規制対象となった場合、多くは没収で済むとは思います。
しかし、麻薬並みに厳重に管理されている医薬品だったらどうでしょうか。
当然拘留や逮捕なんてことも考えられます。
そんなわけない??
いえいえ、日本だって治療用に持ち込んだ医薬品であっても規制対象品を許可なく持ち込めば逮捕されますよ。
外国ならなおさらです。
発達障害の米女性、母親から送られた治療薬で逮捕 “信じられない…”NewSphere
外国での医薬品持込み規制の例
- アメリカ:睡眠薬ロヒプノールまたはサイレースは、持ち込み禁止
- タイ :「プソイドエフェドリン」が配合された医薬品は持ち込み禁止
- 台湾 :市販薬は6種類12個まで
外国に持って行く時に注意したい医薬品<医師から処方される医薬品>
医師から処方される医薬品(医療用医薬品)は、効果が強い分、規制の対象となりやすいです。
その中でも、医療用麻薬と精神系疾患の薬を服用している方は、海外渡航前に絶対に規制の確認しましょう。
医療用麻薬は、ガンなどで強い痛みがある方が服用しますので、強い痛み止めと医師から説明されている方は要確認。
また、精神系疾患の薬は、睡眠薬、抗うつ薬、抗不安薬、ADHDやナルコレプシー治療薬など脳に効く薬を飲んでいる方も確認してくださいね。
同じような薬効でも麻薬・覚せい剤扱い・普通薬になるのかは薬によって異なります。
持ち込めるかどうかは渡航先の国での規制になってしまいますが、少なくとも飲んでいる薬が日本ではどういった分類に該当するのかは医師や薬剤師に確認して知っておくべきです。
なお、成田空港のウェブサイトでは、医療機器の持ち込みや液体の薬の機内への持ち込みも含めて使用用途別に説明されているんで参考になります。
チェックしておきたいですね。
外国に持って行く時に注意したい医薬品<市販薬>
市販薬なら安心!ってことはありません。
特に風邪薬、鼻炎薬、咳止めには注意してください。
具体的には、咳に効くリン酸コデインやメチルエフェドリン、鼻づまりに効くプソイドエフェドリンなど、○○コデイン、○○エフェドリンという成分を含む医薬品は外国には持ち込まない方がいいでしょう。
コデインは麻薬、エフェドリンは覚せい剤原料であるため、国によっては規制の対象となりかねません。
上記したとおり、タイではプソイドエフェドリンを持ち込めないのがいい例です。
行き先の国の医薬品規制を確認する3つの方法
その① 渡航予定国の大使館・領事館のホームページで確認
例えば中国であればであれば在中日本大使館に医薬品を持ち込む場合の説明が書かれています。
アメリカでは、2016年までくらいはアメリカ大使館のホームページで細かく確認できたのですが、今はもう見れないようですね。
これもトランプ大統領の兼ね合いなのかな。
突然復活するかもしれないんで、出発前には確認しておきましょう。
その② 渡航予定国のことを良く知っている人に聞く
企業であれば現地の駐在員やよく出張している方に聞いてください。
現地では過去の海外赴任者が情報を集めたものがまとまっている可能性が高く必ず確認しましょう。
産業医や産業保健スタッフも情報を集めているはずなので、健康管理を担当している部署に聞くのも手です。
その③ 大使館・領事館に電話で聞く
どうしても情報が得られなければ日本にある渡航予定国の大使館・領事館に電話で聞いちゃいましょう。
その際は、医療用医薬品・市販薬にかかわらず、医薬品の商品名をズバリ申し出てください。
各国の大使館・領事館の連絡先外務省ホームページ
全部確認するのは大変!そんな時はどうする?
医療用麻薬と精神疾患の薬は、面倒でも必ず確認をしてください。
しかしその他の医薬品について全部調べるのは大変。
海外で売買目的で薬を持ち込むのではなくて、個人の治療用ということが証明できればいいのです。
そのためには、主治医に英文の証明書を発行してもらうか処方箋を英訳してもらってください。
入国時に入国審査官に尋ねられたらそれを見せれば基本的には大丈夫です。
発行に多少お金を取られる可能性はありますが、入国時のトラブルがなくなると思えば安いもの。
ぜひ持参しましょう。
それでも規制の対象なら没収は免れないでしょうが・・・。
市販薬の場合はそのようなことはできませんので、そもそも持って行かないか口頭で説明できるようにしておくしかありません。
一番重要!市販薬も医療用医薬品も小分けしない
入国審査官にとにかく怪しまれないようにすることが必要です。
それには病院でもらったままの姿、薬局で購入したままの姿で持ち込むことです。
便利だからといって小袋に錠剤を小分けして入れておいたり、市販薬を箱やビンから出してしまわないようにしましょう。
白い粉薬を小袋に入れていたらめちゃくちゃ怪しいですよね。
錠剤やカプセルでも同じです。
見た感じで「薬だな」って思えるようにしておくことが重要!
英語の薬の証明書を無料で誰でも簡単に作る方法
医師に英文証明書の発行を頼んでも「オレ英語できないから~」なんて断られるケースが結構あるようです。
医学部に受かって医師をやっているなら英語が出来ないわけがないので単に面倒なだけだと思いますけどね。
医師が英語の証明書を書いてくれないなら、自分で英語版の説明書を作成して病院に持っていって余白に医師のサインをしてもらえばそれで英文説明書が完成です。
多くの医療用医薬品では、製薬会社が英語の説明書を作成していてそれをまとめたウェブサイトを利用すると良いでしょう。
それは、日本で営業活動している製薬会社のほとんどが加盟している「薬の適正使用協議会」が運営する「くすりのしおり」というサイト。
加盟製薬会社が発売している医療用医薬品について、医療関係者以外でも分かりやすい内容で作られた薬の説明書が日本語版と英語版のどちらも無料で入手可能です。
具体的にどのように作成すればいいのかは下記をご覧ください。
くすりのしおりの操作方法
薬の商品名を調べる
病院や薬局でもらう薬の説明書かお薬手帳を手元に準備してください。
そこに飲んでいる薬の商品名が記載されています。
くすりのしおりのウェブサイトを開く
こちらから「くすりのしおり」へアクセスしてください。
いつも飲んでいる薬を検索する
「製品から検索」のところに薬の商品名を入力して「以上の内容で検索する」ボタンを押してください。
例として、高血圧の薬の「ノルバスク」で検索してみます。
なおノルバスクは、口の中ですぐに溶けるOD錠もありますし、2.5mg、5mg、10mgと3の大きさがありますが、まずは種類は無視して薬の名前だけを入力してください。
ヒットされた候補から飲んでいる薬を選択する
飲んでいる薬の候補が出てきますので、いつも飲んでいる薬を選択します。
この時、英語版の説明書を入手するには、「英語版あり」をクリックしてください。
ちなみに日本語版の説明書を確認したい場合は、薬の名前をクリックするとゲットできます。
なお、この時にいつも飲んでいる薬が候補として出てこない場合や「英語版なし」となっている場合は、残念ながらこの手法は使用できません。
ジェネリック医薬品を服用している場合、沢井製薬とか大手ジェネリック医薬品メーカーであれば説明書は入手できますが、規模が小さくマイナーな製薬会社だと検索できない可能性が高いです。
海外出張・赴任・旅行の予定があれば、「有名な製薬会社のもの」と医師や薬剤師にお願いするのも手です。
さらには下図のような歴史が古すぎる薬は英語版がないことがあります。
英語版の薬の説明書を印刷して、医師にサインを依頼
印刷ボタンを押して英語版の説明書を印刷し、余白に医師にサインをしてもらったら完成です。
まとめ
外国に医薬品を持ち込む際には、渡航国の医薬品規制を確認しなければいけません。
場合によっては拘留や逮捕もあり得ます。
特に医療用の麻薬と精神疾患の薬を絶対に要チェック!
その他の薬については、治療用であることを客観的に証明できるよう主治医から英文の証明書か処方箋の英訳を依頼して持参するようにしましょう。
または自分で英語の説明書を準備して医師にサインをしてもらってもよいでしょう。
あとは持病の治療薬など本当に必要な薬以外は持っていかないことを考えよう。
最後に・・・、日本の医療が最も優れているわけではありません。
言葉の壁はありますし、外国の薬は1個あたりの用量が多いかもしれませんが、現地の外国人向けの医療機関を受診してみるのもいいと思います。
その場合は、旅行者用などの保険加入は忘れずにね。
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