ポテチとか飴とかお菓子などの食べ物を地面に落としてしまった時、何秒までだったら拾ってもOKみたいなルールってありましたよね?
私が小さい頃は「3秒ルール」でしたが、調べてみると地域によって3秒、5秒、10秒と色々なバリエーションがあるようです。
なんとそれは日本だけでなくてアメリカやイギリスなどでも使われるグローバルなルールみたい。
アメリカではテレビ番組の影響もあってか、「5秒ルール」を7割くらいの女性が信じているんだって。
どこの国の人もみんな考えること・やることが一緒なんですね。
人類みな友達ってまさにこのこと。
さて本題ですが、3秒や5秒とはどういうことかと言えば、見た感じで砂などのよごれがついていない場合、落としたモノを口にしても大丈夫かという時間ですよね。
目には見えない細菌、特に体に悪さをする細菌が付着しらおらず、安心して食べられる時間とも考えられます。
世の中にはそんなクソどうでもいいことをマジメに研究するちょっと変わった好奇心旺盛な方がたくさんおられるようで、研究論文もたくさん発表されています。
実はこの3秒ルール、私が以前に働いていた調剤薬局を辞めるきっかけにもなった、私の人生を変えるほどの重大なルールでした。
薬局の中で、3秒ルールを使ってきた若い薬剤師に教える立場の薬剤師を目の前で見たためです。
この記事では、何秒だったら問題なく使えるのか、5つの研究を紹介しつつ、私が転職を決意した状況も一緒に紹介しますね。
目次
3秒ルールで調剤薬局を転職した一部始終
私が製薬会社から転職した先の調剤薬局は零細企業だったのですが、1年くらい経った後に割と大きなチェーン調剤薬局に買収されてしまい、私もそのままスライドして転籍しました。
ある程度の規模になれば当然ですが、その会社にも薬剤師向けの研修を担当する部署がありました。
私が勤務していた店舗の近くに新しい薬局ができ、週1回くらい応援に行っていた時のこと。
ある時、その会社の研修担当部署の責任者の方(薬剤師)もなぜか応援要員として新しい薬局で働いていて、薬剤師としてはヒヨッコの私に色々と教えてくれつつ、患者さんの薬の準備(調剤といいます)をしていました。
薬って1日1回のものもあれば1日3回のモノもありますし、1回1錠だったり2錠だったりと色々な飲み方をします。
特に年配の方で持病を多い場合には薬の種類が増えてしまうと薬の飲み方がすごく複雑になるため、朝の分、昼の分、夜の分をそれぞれ1つの袋にまとめる「一包化(いっぽうか)」をすることも薬剤師の大切な仕事です。
下のイラストみたいな状態にすることです。
一包化は、イラストを見てもらえれば分かる通り、薬を1つ1つパッケージから取り出して袋に詰め直します。
パッケージから薬を取り出すのが大変で、普通はすぐに取り出せるのですが、パッケージが硬かったり、ひっかかって出てこなかったりして、手にちからが入ってしまい、何かの拍子にどこか変なところに飛んで行ってしまうことがあります。
話を戻しますと、たしか1日の仕事のほとんどを終える夕方くらいだったと思います。
一包化をしなければいけない患者さんが薬局に来ました。
普通は、腕が未熟な私が、練習を兼ねてその方の一包化をするものだったんですが、暇だったんでしょう。
なぜか、研修担当部署の責任者の方が一包化を担当することになりました。
他に患者さんがいないため、私はその様子をずっと見ていたのですが、やはり熟練者でもパッケージから薬を取り出す時に薬が飛び出だしてしまうことがあって、その時はこともあろうか床に落としてしまいました。
その時です。
その人は関西人だったっていうのもあって、「3秒ルールや!!」と言って、落ちた薬を拾って何事もなかったかのようにその薬を使って一方化をしたのです。
「いやいやいや、アカンって、それ絶対ダメなヤツだって。1秒でもアカン!」って思いましたが、チキンな私は当時は何も言えずでした。
どんなに考えても、清潔であるべき薬をそのような雑に扱うのは絶対にヤバイよなぁ、研修担当の責任者がソレでは、この会社はお察しレベルだよなぁと思って、好きで入社したわけでもない会社ってこともあって、次の日には転職活動をはじめたのを今でもよく覚えています。
今の会社はかなり恵まれているので、私にとっては3秒ルールのおかげで幸せな現在がありますが、あの時の患者さんにとってはたまってものではないですよね。
清潔でなければいけない薬は、床に落とした時点でもう使ってはいけない話だったんですが、自分が食べるお菓子なんかは、3秒ルールを使ってしまうことってありますよね。
では、3秒たった後の汚染レベルはどんなものか、何秒だったら安心して口にできるのかを真剣に調査した5つの研究を解説していきます。
3秒ルールをマジメに研究した5つの研究
2007年アメリカ:イリノイ大学で学んでいた女子高生の研究
はじめに紹介するのは、あらかじめ床に大腸菌をバラまいておき、そこにグミとクッキーを置いた研究です。
湿り気のある物と乾燥した物で違いがあるのかを調べたというもの。
結果はどちらも5秒以内に大腸菌が付着したとか。
高校生の研究ってこともあって、深く調査をしておらずこれ以上のことはこの研究では明らかになっていません。
2007年アメリカ:クレムゾン大学の研究
ハムとパンを使って、落ちた物を拾うまでの時間と付着するの細菌数を調べた研究で、先ほどの女子高生の研究の続きみたいな研究です。
結果は、5秒後でも1分後でも付着している細菌数に変化はありませんでした。
落とした場所も調べていて、タイルや床などツルツルしている所とカーペットとでは、ツルツルの方が細菌が付着しやすかったようです。
2012年イギリス:マンチェスター・メトロポリタン大学の研究
ジャム付のパン、茹でたパスタ、生ハム、ビスケット、ドライフルーツの5種類を3、5、10秒間床に置いた時、それぞれに付着する細菌の量を調べた研究です。
結果は、茹でたパスタとドライフルーツは3秒で人に有害な細菌が付着しましたが、それ以外の3種類は10秒たっても問題なかったとのこと。
3秒ルールが適用できるかは「物による」ってところですね。
2014年イギリス:アストン大学の研究
先ほどのクレムゾン大学の研究と同じような研究ですが、調べる食べ物のバリエーションを増やし、水分量が異なる5種類で試した研究です。
結果はクレムゾン大学の研究結果とは逆で、床に落とした時間によって付着する細菌数が異なるとのことです。
また水分量が多い方が細菌数が多かったとのこと。
結論は、5秒くらいまでなら拾って食べてOKだけど、できる限り早く拾った方がいいというもの。
当たり前というかやっぱりねという結果ですね。
2016年アメリカ:ラトガース大学の研究
最も新しい研究です。
これまで紹介した4つの研究を全て総合させたような研究です。
しかも合計2500回以上も物を床に落として試した結果なので、一番信頼性が高いかもしれません。
スイカ、パン、グミなどの色々な食物を、タイルやカーペットなどの色々な所に落として、拾うまで1秒未満、5秒、30秒、300秒の4つの場合に分けて、付着する細菌の数を調べたもの。
全部で128通りを試して、それぞれ20回ずつ、合計2,560回の測定を行っています。
結果は、落とした時間の長さと落とした物の水分量が増えると付着する細菌数が増えるというもの。
細菌には足がないので水分を伝わって移動するからが理由で、時間が長くなるほど汚染度が高くなるのは想像できますよね。
汚染リスクは、スイカで最大、グミのキャンディで最小であったようで、カーペットよりもタイルの方が汚染度が高かったようです。
ここで重要なのが、1秒未満でも細菌汚染が起こったということ。
落とした即ダメというのが結論です。
試す回数も多く5つの論文の中では一番信頼度が高い結果なので、落としたらすぐ拾っても食べたらダメってこと。
科学の世界では、「3秒ルールは存在しない」が結論です。
まとめ
世界的に使われる○○秒ルール。
見た感じで汚れていなければ、このルールを使ってしまうことが多いと思いますが、最新の研究の結果では落としたら1秒と持たずに細菌感染を起こすことが明らかになりました。
床に食べ物を落としてしまったら、見た目がキレイな場合は食べたくなる気持ちは分かりますが、もったいなくても捨ててしまいましょう。
ましてや清潔が超重要な薬はもちろん、商品であればなおさらな話です。
誠実なことをしなければ客はおろか、従業員すら失うことになりかねません。
「3秒ルールはあきまへんで!」
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