薬剤師の責務を全うすることで防ぐ危険運転

2013年11月に悪質運転の処罰を強化する自動車運転死傷行為処罰法が参議院で可決され成立し2014年から施行されています。

成立した背景としては、危険ドラッグやてんかんの未治療者による事故が相次いだためで、他の薬については報道では言及されていませんが、薬剤師的にはものすごいインパクトのあることと感じています。

業務上の事故にも影響しますから産業衛生に関わる者としても大きな意味を持つものと考えます。

自動車運転死傷行為処罰法とは

この法律は全国各地で後を絶たない飲酒運転による事故はさることながら、危険ドラッグやてんかんなどの未治療者による交通事故に対して厳罰を加えるという主旨で策定されています。

ポイントは以下のとおりです。

  • 特定の病気の影響で「意識を失うかもしれない」と認識、飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難になったといった状態で死傷事故を起こした場合にも危険運転致死傷罪を適用できて最高で懲役15年が課せられる
  • 病気の種類はてんかんや統合失調症などで政令で定められる 主な病気の種類は次の6つが該当とされる
    ①統合失調症、②てんかん、③再発性失神、④無自覚性の低血糖症、⑤双極性障害、⑥重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
  • 高速道路などの逆送も対象
  • 事故現場からの逃走など飲酒や薬物の影響を隠そうとする行為を罰する「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」(最高刑・懲役12年)を新設され、酒などの影響が弱まってから検挙された方が罪が軽くなる「逃げ得」を解消
  • 無免許者には厳罰

薬剤師として気になるところ

「飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難になったといった状態で死傷事故を起こした場合にも危険運転致死傷罪を適用でき・・・」ってということろです。

法律でいう薬物と聞くと麻薬や覚醒剤を思い浮かべてしまいますが、この法律での薬物はもう少し範囲が広いかもしれません。

というのは、例えばレキップなど一部のパーキンソン病治療薬では添付文書の警告で車の運転をさせないよう注意喚起がなされています。また、禁煙補助剤チャンピックスでは警告ではありませんが同じ内容の注意喚起がなされています。

パーキンソン病の方では車の運転をされるケースは少ないかもしれませんが、禁煙補助剤を服用する方の多くは車の運転をする場合が多いのではないでしょうか。

他にどんな薬があるのか少し調べてみました。

添付文書上で車の運転ができない医療用医薬品

医薬品医療機器総合機構の添付文書検索ページで調べてみました。

警告、禁忌、原則禁忌、慎重投与、重要な基本的注意に「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」を含む医薬品は、全部で441品目ありました。(2016年2月14日現在)

後発品も多くありますので成分別の種類ではもっと少ないですが、そんなにあるのかという感想です。

多くの精神系の薬が入っていますし、リン酸コデインやアベロックスなど風邪やそれに付随するような症状でも使用される薬が入っています。

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病院、薬局薬剤師がしなければいけないこと

薬、患者に応じた対応を

上述のように車の運転をしてはいけない薬を投薬する際はもちろんのこと、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬などの車の運転には注意するとされるレベルの医薬品であってもしっかりと眠気について伝えることが必要です。

患者のキャラクターや車を運転しないわけに行かない地域など、通り一辺倒で服薬指導を行うのはどうかと思いますが、伝えるべきことはしっかりと伝えていきたいものです。

無いとは思いますが、薬剤師がしっかり伝えなかったからだ~なんて訴訟になっても困りますから。取り扱っている医薬品で該当するものは何かを再度確認する必要があります。

運転が業務の方は特に注意

患者がタクシードライバーなど業務上で車の運転をしなければいけない場合はさらに厳重にすべきです。その患者のみならず、所属する会社全員にも影響されることで、代替品の提案などができる時には処方変更の相談を処方医することも薬剤師の責務かと思います。

京都大学病院では、特に注意して服薬指導をしてほしい薬には処方箋に記載があるようです。このような対応がなされるのはごく一部の病院ですから、医師から指示がなくとも薬剤師側でしっかりと対応できるようにしたいものです。

http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~yakuzai/yakkyoku/20141022.html

産業薬剤師がしなければいけないこと

出勤・退勤・出張の時に車の運転で事故を起こすと労災に該当しますから、事業者に管理監督責任が発生します。社内の診療所で処方された風邪薬を飲んで、眠くなったんです・・・・、なんてことになればこれは一大事です。

また、車の事故ではなく、業務上の災害を引き起こしてしまってもこれは問題です。一歩間違えば生命に関わる業務を担当されている方もいるでしょう。

社内診療所で取り扱っている薬に問題がないか産業医と議論をする必要があるかと思いますし、危機管理の一環でセレスタミンなど眠気が発生するリスクの強い薬は取扱いをやめてしまうなんていうのも手かもしれません。

自動車の任意保険が使用できないケースも

種類にもよりますが、通常の治療で使用される処方薬、市販薬でも副作用があると知りながら運転をして事故を起こしてしまうと自動車保険が適用されない場合があるようです。

http://life.oricon.co.jp/rank_insurance/news/2063092/

まとめ

飲酒運転、危険ドラッグを使った上での運転、てんかんなどの疾患を持っていて未治療状態で運転することは言語道断の行為ですが、風邪薬などよく使用される薬をのんで、副作用の眠気から事故を起こしてしまい、この法律が適用されてしまったらとても悲しいことです。

また自動車の任意保険も適用されないケースがあるようで、金銭的な面からも患者さんの人生を終了させてしまう事態にもなりかねません。

一部病院では医師側から特別な服薬指導の依頼が処方箋を通じてあるようですが、そのような指示がなくとも薬剤師としてしなければいけないことだと思います。

薬剤師として当然実践することを愚直に実施することで、悲しい事故は防げることだと思いますので、今一度、こころを引き締めて業務をしなければいけないなと思った次第です。

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