高額で話題のコレステロールを下げる薬「レパーサ」 研修会メモ

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2016年4月21日に悪玉コレステロールとされる「LDLコレステロール」を下げる注射薬「レパーサ」が発売になりました。

毎日飲む薬ではなくて、2週間に1回注射してLDLコレステロール値を下げることと薬代がやたら高いということで薬剤師のあいだで話題になりました。

個人的にとても興味がある中、たまたま近くの薬剤師会の研修会のテーマがレパーサについてでしたので参加してきました。

そこでこの記事は、レパーサとはどういった薬なのか研修会で教えてもらった内容を医療従事者ではない方にも分かりやすく紹介します。

レパーサはどういう薬?

レパーサは血中のLDLコレステロールを肝臓の細胞に取り込ませやすくする薬です。

血中にLDLコレステロールは「悪玉コレステロール」で、大量にあると動脈硬化を進めて心臓や脳の血管を詰まらせてしまうために血液中から少なくさせることが重要

血液中のLDLコレステロールは少なければ少ない程、体に良いとされています。

LDLコレステロールは、肝臓にあるLDLコレステロール受容体と合体して細胞内に取り込まれて分解されるのですが、細胞内ではLDLコレステロールと一緒に受容体も分解されてしまいます。

そうすると肝臓の細胞に取り込まれるLDLコレステロールが少なくなって、血液中に留まってしまいやすくなります。

LDLコレステロールがその受容体と合体する所に大きく関与するのが「PCSK9:ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型」という物質です。

LDLコレステロールが受容体と合体する際にPCSK9も一緒にくっつくと細胞内では受容体も分解されてしまうのですが、PCSK9が無いと受容体は分解されずに再利用できて効率よくLDLコレステロールを細胞内に取り込むことができるようになります。

レパーサはPCSK9の働きを邪魔することでLDLコレステロール受容体の再利用率を高める働きのある薬です。

レパーサは誰にでも使える?

レパーサは、遺伝で生まれもってPCSK9の働きが強い「家族性高コレステロール血症(FH)」の方と過去に心筋梗塞や脳梗塞などの心臓や脳の血管による病気を起こしてしまいLDLコレステロールをとにかく下げなければいけない方しか使用できません。

しかもどちらの方も食事療法や運動療法、禁煙などの生活習慣の改善に加えて、コレステロールを下げる内服薬で最も強力な分類の「スタチン」を最大量服用していることが条件です。

LDLコレステロールが高値の方は、標準値の方に比べて心臓や脳の血管の病気になるリスクが約2倍になりますが、遺伝病のFHの方はそのリスクが約20倍にもなるとされます。

また、過去に心臓や脳の血管の病気を起こした方は、再度血管が詰まってしまうと命に関わりますから薬でガンガンLDLコレステロール値を下げなければいけません。

家族性高コレステロール血症(FH)とは?

FHは、ハゲとかみたいに遺伝したらどうしようみたいなものではなく、確実に遺伝してしまう病気です。

遺伝の仕方は血液型と同じで、母親の遺伝子と父親の遺伝子の2つセットになります。

AO型とAO型の両親の子供は、AA型、AO型、OO型になるのと同じような考えです。

「○×」、「××」の組み合わせでは1/2の確率で「○×」になりますよね。「○」に該当する遺伝子がFHだと考えると分かりやすいです。

両親共にFHの場合には上記の組み合わせが「○○」ということもあります。

こうした方はPCSK9の働きが強すぎて、LDLコレステロールが極めて高値になってしまいます。

レパーサの効果は?

LDLコレステロール値を下げる効果は確かなものがあります。

スタチンを最大用量服用して十分LDLコレステロール値が下がっている方にレパーサを投与すると、そこからさらに約70%くらいLDLコレステロールを下げます。

スタチンはLDLコレステロール値を約40%くらい下げますから、レパーサを使う方は単純計算で元のLDLコレステロール値から82%下げて18%にすることになります(1×0.6×0.3)。

例えば、元のLDLコレステロール値が300mg/dLの方だとスタチンで180mg/dLくらいになって、レパーサで54mg/dLくらいになるということです。

LDLコレステロール値が300mg/dLっていったら相当高く健康診断で見つかったら即刻病院受診レベルですが、54mg/dLだと基準値内に収まってしまいます。

しかもレパーサを2年以上使い続けても効果は維持でき、脂質の関係の検査値である「中性脂肪」なども下げますし、善玉コレステロールの数値を高める作用もあるので、とても有用な薬と言えます。

レパーサは安全に使える?副作用は?

レパーサは2016年7月末時点は、500人くらいの方しか投与されていないとメーカーの方が言っていました。

何百・何千万人に使用されている痛み止め「ロキソニン」ですら、いまだに副作用が発見されるので、たかが500人程度では安全性は未知数です。

またPCSK9は発見されてから10年ほどしか経っていませんので、LDLコレステロールの細胞への取り込みに関する働き以外に何か重要な働きがあるとすると重たい副作用として現れてしまいます。

さらにレパーサのような「抗体薬」は、とても重い副作用が現れることがありますので、しばらくは注意が必要でしょう。

とはいっても発売前までに行ったヒトでの臨床試験(治験)では大きな副作用はありませんでしたので、現時点では「安全な薬」です。

レパーサは自宅でも使用できる?

糖尿病のインスリンは自宅で自分で注射できるような形状の薬が発売されています。

レパーサも同じように自宅で投与でいる「ペン」型の薬も用意しているようですが、副作用をしばらく確かめてからでないと自己投与できるようにならないとのことでした。

発売からおおよそ1年後での2017年4月には家で自己投与できるようになっていることでしょう。

なので2016年8月現在では、レパーサを投与するには病院で医師に注射してもらう必要があります。

追記:2018年現在では、自己注射も発売されています。

レパーサの値段

2018年現在では、140mgの注射1本24,136円で、通常はそれを2週間おきに1本(4週間に2本)、または4週間おきに3本使用します。

自己負担額3割として、薬代だけでも毎月約2万円程かかることになります。

他の病気でも医療費がかかっている方は「高額療養費」制度も活用できる場合もありますし、医療に関わる費用が年間10万円を超えることになるために確定申告で「医療費控除」を受けると税金が還付されます。

まとめ

悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを血液中から少なくする注射薬「レパーサ」が発売になりました。

レパーサは、家族性高コレステロール血症(FH)やこれまでに心臓や血管の病気になったことがあるリスクの高い方だけが使える薬で、LDLコレステロール値が高いからといって誰にでも使用できるものではありません。

レパーサ投与の対象になる方でも生活習慣の改善やスタチンなどの内服薬での治療から開始して、それでもLDLコレステロール値が思うように下がらない時に初めて投与されます。

内服薬での治療を行った方でも十分な効果を発揮すると共に今のところは重たい副作用もなくて、とてもいい薬であると考えられます。

薬の値段(薬価)がとても高い薬ではありますが、それに見合う効果が期待できます。

注射でコレステロールを下げるなんてすごい時代がきたものだと思いました。

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