いつもと生活を送りながら薬を使って楽にダイエットしたいけど、そんな薬ってある?体に負担かからない?って声に薬剤師がお答えする記事です。
体重が減る効果のある薬は、世の中にあります。
そのような薬をこれから紹介していきますが、ダイエットの基本をいま一度知っておきましょう。
やせるためには、ご飯やおやつなどで食べるカロリーよりも消費するカロリーを増やすこと。
数式で書けば「消費カロリー>摂取カロリー」。
やせるための薬は、「消費カロリー>摂取カロリー」にしやすくする作用があるものです。薬を使ってもこの法則は崩れることはありません。
最初に言っておきますが、生活スタイルを変えずに副作用のリスクもなく薬で楽にダイエットすることはできません。
2018年現在ではそんな夢のような薬はなく、薬剤師としては、そのような薬を使うことを全くオススメしません。
副作用のリスクなくダイエットをしたい方は、ダイエットの王道的なやり方を紹介した記事がありますので、そちらをご覧ください。
健康的にこっちの方法でやせられることをオススメしますよ。
それでもやせられる薬を知りたい!!って方に体重を減らす作用がある、又は美容クリニックでダイエット用として発売している薬をこれから解説していきます。
目次
ダイエット・やせるを主作用にしている薬
ダイエット専用の薬をまず解説します。
最初に紹介するマジンドール1種類だけが日本でも発売されています。
- マジンドール(商品名:サノレックス)
- フェンテルミンとトピラマートの合剤
- ロルカセリン
- オルリスタット
マジンドール(サノレックス):日本で発売
日本で唯一販売されているダイエット用の薬です。
脳に作用し、食欲を抑えることで食べ過ぎを少なくし摂取カロリーを減らす薬です。
服用した人の75%がやせられるという薬で、20年以上前から使用されている歴史ある薬です。
薬を飲めば食べたくなくなるこの薬は、何もしなくてやせられる夢のような薬に思えますが、脳に効きすぎて覚せい剤と同じように「依存」状態になってしまう恐れがある薬です。
薬なしでは生きていけなくなってしまう可能性があります。
そのためマジンドールが使用できる人は、病的に太っている方などかなり限られ、使用できる期間も3ヶ月以内と設定されています。
マジンドールはほぼ確実にやせれると思いますが、健康な人が使うには危険性が高すぎます。
美容クリニックで1錠500円くらいで販売していることもありますが、気軽に使うのはマジでやめた方がいいですよ。
フェンテルミンとトピラマートの合剤:日本未発売
フェンテルミンは覚醒剤「アンフェタミン」に非常に良く似た化合物で、マジンドールと同じく食欲低下作用があります。
トピラマートは、本当はてんかんの薬で日本でも「トピナ錠」という商品名で発売されている薬です。
トピラマートには、副作用として「体重低下」があるため、それを逆に利用してダイエット薬として使用されます。
アメリカではこの2つの成分が混ざった薬「Qsymia:キューシミア」が販売されています。
フェンテルミンは覚せい剤に似た薬ですので、マジンドールと同じように「依存」になってしまう可能性があります。
さらに過去にフェンテルミンによく似た薬もアメリカで販売されていたようですが、心臓への副作用が多くて販売中止となってしまいましたからこの薬も安心できません。
気軽に飲むには怖すぎる薬です。
ロルカセリン:日本未発売
最も新しい種類のダイエット薬です。
脳内のセロトニン受容体というところに作用して、少しの食事でも満腹感が得られるようにする薬です。
同じ脳に作用する薬ですがマジンドールとは違って、「うつ」とか精神系の病気の治療薬に似たようなものです。
日本の製薬会社エーザイが、「BELVIQ」という商品名でアメリカで2016年から発売しているので、いつかは日本で販売されるかもしれません。
ただ、同じ作用の薬が過去に副作用で販売中止になっていたり、癌を発生させる可能性があると考えられるようで、この薬も気軽に手を出すべきではありません。
うつの薬も依存とまでは言いませんが、脳が薬に慣れてしまって急に薬をやめると禁断症状が出ることがありますから、このような点からもやめておいた方がいいと思います。
実際にBELVIQのウェブサイトでは、幻覚、行動、思考、感情の突然の変化など、精神的な副作用の危険性が書かれています。
これも気軽には手が出せないですね。
オルリスタット:日本未発売
アメリカでは、医療用医薬品としては「Xenical:ゼニカル」という商品名で販売されています。
また、市販薬でも「alli:アライ」という商品名で発売されていています。
腸管からの脂肪吸収を抑制する薬。
要するに食べた脂分を体へ吸収させない薬です。
じゃあ食べた脂分はどうなるのか?
それは、う○こと一緒に出ることになります。焼肉などを食べた後では、その量はハンパないという噂です。
また便意をコントロールできなくなるようで、パンツを汚す可能性があるようです。(恐ろしい副作用ですね・・。)
さらには肝臓への副作用もあって厚生労働省は個人輸入しないよう呼び掛けています。
実はオルリスタットと同じ作用を持つ薬(セチリスタット:オブリーン錠)が日本でも発売してもいいことが認められていますが、ダイエット効果が弱く薬の価格が付けられなくて発売には至っていません。
リスクがたくさんあるのに効果が弱いんだったら服用する意味がないです。
本当は違う病気の薬だけどダイエットにも利用される薬
次に解説する薬は、本当は糖尿病や脂質異常症の薬をダイエットに効果があるとして美容外科で使われることがある薬についてです。
そんな薬が本当にダイエット効果があるのか、副作用のリスクはどうなのかを解説します。
- αグルコシダーゼ阻害薬
- エゼチミブ
- GLP-1作動薬
- SGLT2阻害薬
- ホスピタルダイエット
αグルコシダーゼ阻害薬
αグルコシダーゼ阻害薬は、糖尿病の治療薬として通常使われます。
炭水化物をブドウ糖に分解するのを抑える薬で、糖分の吸収をゆっくりにさせて急に血糖が増えるのを抑える作用があります。
- 商品名:ベイスン(ボグリボース)
- 商品名:グルコバイ(アカルボース)
- 商品名:セイブル(ミグリトール)
現在3種類(プラスそれぞれのジェネリック医薬品)が日本では発売されています。
これらの薬は、急激な血糖上昇を抑制する作用があるだけで、いずれは糖分は吸収されてしまうので、カロリー的には変わりありません。
多少は糖分の吸収が抑制できるかもしれないレベルで、ダイエット用としては使える薬ではありません。
何より美容クリニックでは、薬価の10倍くらいの値段で販売しているのが許せんっすね。
エゼチミブ
ゼチーアという商品名で販売されている脂質異常症の薬です。
食べ物からコレステロールの吸収を抑えて、血中コレステロール値を下げる薬です。
コレステロールと聞くと油のようなものをイメージしますが全く違います。
カロリー=コレステロールではありませんので、コレステロールの吸収を抑えたところで体重には効果はありません。
何でこれがダイエット用に使われるのか意味が分かりません。
GLP-1作動薬
ごはんを食べると消化管からホルモンが出てきてお腹がいっぱいに感じるようになりますが、GLP-1作動薬はそのホルモンの働きをして、ごはんを食べたかのような感覚にさせて食欲を減らす薬です。
糖尿病の治療薬として使われており、日本では次の4つが発売されています。
- 商品名:ビクトーザ(リラグルチド)
- 商品名:バイエッタ(エキセナチド)
- 商品名:リキスミア(リキシセナチド)
- 商品名:トルリシティ(デュラグルチド)
この系統の薬は、体重減少作用が確認されています、いずれも注射薬であって美容クリニックなどで処方してもらったとしても少し敷居は高いと考えられます。
ここまでで紹介したダイエット薬に比べればマシな薬ではあるもののは、低血糖症状を起こす副作用もあり、気軽に使うのはやめておくべきでしょう。
低血糖症状が起きて、転倒したり、事故を起こしたりしたら大変ですから。
驚きなのは、1回も病院に行かず、スマホを使った遠隔診察(テレビ電話など)で、この薬が入手できてしまう時代のようです。
オススメはしないので、そのウェブサイトへのリンクは貼りませんが、いやホント簡単な気持ちで使わない方がいいですよ。
ダイエットがんばろ。
SGLT2阻害薬
血液中の糖を強制的に尿から排出させてしまう薬です。
日本では、次の6種類が発売されています。
- 商品名:スーグラ(イプラグリフロジン)
- 商品名:フォシーガ(ダパグリフロジン)
- 商品名:ルセフィ(ルセオグリフロジン)
- 商品名:デベルザ(トホグリフロジン)
- 商品名:カナグル(カナグリフロジン)
- 商品名:ジャディアンス(エンパグリフロジン)
体から糖がなくなるので、食事をとらなかったのと同じ状態になるため、ダイエット効果があります。
元々の体重などで個人差はありますが、3~数キロの体重減少効果があるとされています。
ただ、この体重減少効果は、糖と一緒に水分が出ていくだけでは?という指摘もあり、体重減少効果はそれほどない可能性があります。
実際、一番最近発売されたジャディアンス錠での副作用として「体重減少」が起こる頻度は、5%以下です。
水分も出ていってしまうことで、血がドロドロになり血管が詰まって脳梗塞などを引き起こすリスクも指摘されていることもあって、この薬もダイエット用にはオススメすることはできません。
ホスピタルダイエット
タイの病院で、ダイエット用に「ホスピタルダイエット」という薬を処方してくれるようです。
でもこれは危険がいっぱい。
厚生労働省も個人輸入も含めて、入手しないよう注意喚起がなされています。
下剤、甲状腺の薬、交感神経に作用する薬、うつの薬、利尿剤などさまざまな成分を含む薬のようです。
どれも理論上はやせそうな感じはありますが、副作用リスクの方が大きくて健康な人が飲むものではありません。
まとめ
飲むだけで体重が減る薬が世の中にあるのは確かです。
しかし、依存が起こったり、副作用・安全性の面で問題があったり、どれも気軽に使うべきものではありません。
2018年時点では、健康な人がダイエットを薬に頼るのはまだ早いと思います。
ダイエットの基本は、「消費カロリー>摂取したカロリー」にすること。
運動をしたカロリー消費はかなり大変ですから、「食べ過ぎない」が最も手っ取り早いダイエット方法です。
正しいダイエット方法は次の記事をご覧ください。
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