【薬剤師】病院やクリニックでの仕事内容・年収・就職、転職対策

私は薬学部を卒業して大学院へ進学し、薬剤師としてドラッグストアで働いた経験もあります。

また大学院修了後は製薬会社の研究開発部門に就職した後、調剤薬局・診療所の薬剤師として転職も行っています。

転職回数の多い薬剤師は数多くいると思いますがこれほど多くの職種を経験している薬剤師はほとんどいないのでは思っています。

そんな私が調剤薬局、ドラッグストア、病院、製薬会社など薬剤師の主な就職先の概要、給料、待遇などを4つの記事でシリーズ(+薬剤師以外の就職先の1記事)にてお伝えしています。

この記事では、薬学生の多くがまず目指すであろう病院薬剤師・診療所薬剤師の特徴や就職転職についてお伝えします。

診療所

概要・特徴

診療所は、ご存知のとおり病床数が19床以下の医業を行う医療機関です。

狭い空間でいつも同じメンバーで仕事をするので人間関係は極めて重要です。

診療所は基本的には入院は受け付けていませんから、扱う薬は注射薬や点滴はなくて錠剤やカプセルなど調剤薬局と同じような外来で使用できるものばかりのため、診療所で働く薬剤師が実施する業務は調剤薬局と大きく変わりはありません。

しかし、調剤薬局と診療所では管轄する法令が異なりますから必要な要件は全く違います。

調剤薬局は「薬機法」にもとづき運営していますが、診療所は「医療法」にもとづき運営します。

なので、診療所での薬の調剤・投薬の方法は複数あって次の4つになります。

  1. 院内で医師自らが調剤している場合
  2. 院内処方せんを発行し薬剤師が調剤している場合
  3. 院外処方せんを発行している場合
  4. 院内で医師の監督下に看護師などが調剤している場合
医薬分業率が7割くらいありますから多くは2番目の院外処方せんを発行するケースですが、残りの3割は院内で薬を準備することになります。

薬を準備する「調剤」は本来は薬剤師法によって薬剤師の独占業務です。

しかし特別な状況では医師が自らの処方に限って調剤することは認められていますから上記の1~3のパターンは問題ないです。

4つ目のパターンは、最近でも医師会VS薬剤師会で議論の対象になるケースです。

医師会の政治力が強すぎて法令の拡大解釈が認められていて医師の監督下であれば看護師だろうが医療事務だろうが誰が調剤してもいいということになっています。

そんなことがまかり通っているために診療所に勤務する薬剤師はほぼいないのが現状です。

仮に診療所に薬剤師が勤務していたとしても院長の近親者であったり、パートであることが多く、正社員で雇用している場合は、抗がん剤の混注など特殊技能・知識が必要な診療所以外ではほぼありません。

または私のように企業内の診療所で働く産業薬剤師であるケースです。

給料の面

事例がほとんどありませんから詳しくは分かりませんが、入社時は病院薬剤師よりかは給料がいいことが多いですが、個人経営の診療所では、売り上げアップに貢献できなければ大きな昇給は考えられません。

福利厚生など各種制度もあまり期待できません。

しかし、個人経営であるがゆえに融通度が高いという面もあるため、実績を院長や事務長にきちんとアピールし交渉することで昇給などは可能な場合もあります。

なお、産業薬剤師の場合は所属する会社の給料テーブルの通りで、薬剤師用の専用手当があるとか何か良い処遇はなさそうです。

良くも悪くもほかの社員と一緒です。

裏を返せば平均給与や福利厚生などの制度が充実している大企業の産業薬剤師であればかなりの厚遇が期待できるということです。

仕事の面

よくある町医者の薬剤師で、扱っている医薬品もたいした数はないので管理はしやすい反面、業務を行っている中で自然と身につくことが少ないために自ら積極的に勉強をしていかなければ薬剤師としての能力不足に陥りやすいです。

もし就職を考えているならあまりオススメはできません。

がん専門クリニックなどで、抗がん剤の混注がある場合は、給料はいいかもしれませんが業務負荷は極端に高くなります。

一方で産業薬剤師の場合は、薬剤師としての技能の他に所属する会社で通常必要とされる基礎知識は求められます。

聞いた話ですと銀行に勤める産業薬剤師は銀行業務も少しはするとか。

ワークライフバランス、就職転職

ワークライフバランス

診療所の営業時間に依存するため、昼休憩が長く休みの日が少ないのが特徴です。

薬剤師の人員を余裕をもって採用している診療所があるとは考えにくいため有給休暇の取得は調整に困難を伴うでしょう。

産業薬剤師の場合はワークライフバランスはいいと思いますよ。

私なんか有給はすべて消化していますし残業は基本的にはありませんから。

新卒での就職

町医者では即戦力が求められますし教育担当者がいませんから新卒採用はほぼ考えられません。

病院で勤務して経験を積むのがいいでしょう。

開業予定の医師から声がかかるかもしれません。

まぁその場合はクリニックの横で調剤薬局を開業してほしいということだと思いますが。

産業薬剤師の場合も中途入社が基本ですが、新卒採用する会社もあるかもしれません。

転職での就職

町医者では薬剤師の勤務経験があって基本的な素養が備わっていれば採用されるものと考えられます。

ただほとんど転職の募集を聞いたことがありません。

調剤薬局編でもオススメしているのですが中小の転職エージェントに登録しておくといいと思います。

規模の大きい転職エージェントは依頼料が高いために町医者では依頼することは基本的にはありません。

例えば次のような会社です。

ジョブデポ薬剤師転職・薬剤師求人の会員登録

産業薬剤師の場合、薬剤師の職能を利用して新しい事業を始めるなら別ですが、基本的には欠員募集であることが多いです。

当然ですが規模の大きな会社ほど競争率は高くなりますから転職活動は一筋縄ではいきません。

製薬会社など企業への就職活動をするのと全く同じ、筆記試験対策や面接対策が当然ながら必要です。

合格までの過程はその会社の通常の社員と同じ選考となるはずですから、インターネットなどで受験する予定の企業での転職情報を調べておく必要もあると思います。

筆記試験といえば「SPI」が有名ですが色々な種類がありますから、その企業ではどのようなものを使う傾向にあるのかとかを知らないと対策の打ちようがありません。

募集自体は転職エージェント経由が多いです。これもその会社でよく使用するエージェントを利用するのが通常です。

希望の会社の転職情報が良く掲載されている転職エージェントに登録してください。

この場合は上記の町医者と違って大手の転職エージェントになるかと思います。

産業薬剤師の募集があるような会社は規模が比較的大きいですから、よく使用する転職エージェントも大企業が多いです。

リクナビマイナビといった大手の薬剤師転職サイトには必ず登録するようにしましょう。
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病院

概要・特徴

病院は診療所よりも規模が大きく、20床以上の病床を保有する医業を行う医療施設のことです。

最先端の大学病院、地域の中核となる大病院、そこまではいかないにしても大きな病院、個人経営の病院、急性疾患が多く扱う病院、おじいちゃん・おばあちゃんの療養型の病院、がん専門病院など、色々な病院があります。

共通して言えることは、どの病院に勤めるにしても高度な薬学知識が必要でいつも知識を最新なものにしておく必要があるということです。

給料の面

規模や運営母体のよって異なりますが、薬剤師の中では一般に給料は低いです。

ただそれは調剤薬局がドラッグストアと比較した場合であって、平均的なサラリーマンと比べればいい方だと思います。

とは言っても後から出てきますが勤務時間や勉強時間などを含めると薄給と言わざるをえません。

しかし、確実に知識、技能、人望を高めていけば出世でき、病院幹部でもある薬剤部長になれればいわゆる「勝ち組サラリーマン」にもなれます。

また、国立病院機構や市民病院などの公的な病院であれば公務員の処遇を受けることもできます。

大病院では「抜擢」は基本的はありませんから給料は徐々に上がるイメージで、薬剤部長になれる頃には年齢はかなりいっていると思われます。

一方で中小の病院であれば比較的若くして薬剤部長になれるチャンスはあります。

給料面では大病院の「ヒラ」の薬剤師よりかはいいとは思いますが、大儲けをしている中小病院を除いて大病院の薬剤部長には一般的にはかないません。

中小病院の薬剤部長を歴任していき実績が認められればステップアップできるチャンスもあります。

ということで若くして経済的に成功したいなら病院はオススメできません。

知識技能を高めて最高レベルの医療を提供して患者さんを助けたいという思いであったり、薬学を極めたいという思いがなければ勤めあげるのは難しいでしょう。

ただ開業予定の医師から院外処方せんを受け付ける薬局開業のお誘いを受けやすいのは病院勤務薬剤師であるのは間違えありません。

そういった思いで日々業務に当たれば野心は叶うかもですね。

1つオススメな情報があります。

大企業が運営している病院があって、その病院の給料水準は運営企業と同じです。

トヨタ自動車、マツダ自動車、パナソニック、JRなど、名だたる企業で病院を運営していますので、給料水準が高い企業が運営している病院に就職するのも手です。

仕事の面

外来調剤業務の他、注射剤の準備、病棟での服薬指導など非常に多忙です。

病院は24時間365日稼動しているためにシフト制で夜勤や休日出勤がありえます。

年越しを病院を迎えるなんて「病院薬剤師あるある」です。

公務員の場合はあり得ませんが、民間の病院では十分な人員がない場合では夜勤翌日も通常勤務があり得ます。

また必要な知識や技能の幅や深さが求められますし常に最新なものに磨きをかけることが必要となるために勉強会が非常に多く開催されます。

これは自主参加であるもののほぼ強制参加に近いものがあります。

大学病院や最先端の大規模病院をはじめ、多くの病院で薬剤師も日々研究を行って学会発表も行わなければならず、通常勤務の他にそれらもこなさなければならないために高い志が必要です。

私の周りの薬剤師の中では、100床くらいの中規模病院の薬剤師、特に薬剤部長が最もやりがいがあるのではという結論に至っています。

しがらみが少なく色々なことにチャレンジできる可能性が高いとのことです。

ワークライフバランス、就職転職

ワークライフバランス

出世には無縁で割り切っている薬剤師を除いて、高頻度開催の勉強会への参加、さらに夜勤など長時間労働、不定期の休みなどで、ワークライフバランスは基本的にはあまりよくありません。

でも救いとしては、有給休暇は案外とりやすい傾向にあるようです。(私の聞いた範囲ですが)

これも仕事の内容や人員との兼ね合いでしょう。

新卒での就職

新卒薬剤師の就職希望No.1で就職の競争力は高いです。

そのためか、規模が大きくなればなるほど病院は新卒でしか就職するのが困難で最初が肝心となります。

募集人数が少ないため就職希望の病院があれば学生時代に研修にいくことをオススメします。

または大学病院でよくありますが、欠員でるまではバイトや契約社員として雇ってもらうという手もあります。

就職試験は専門性試験(国家試験みたいな試験)面接を行うパターンが多いです。

県立病院や市民病院などの公務員として就職したい場合には、それに加えて通常の公務員試験も必要なケースもあります。

また、公務員の場合だけですが病院に就職できたとしても、異動によって保健所や県庁・市役所など全く異なる業務に従事する可能性はあります。

企業が運営している病院の場合も同じです。

場合によっては、母体企業の健康増進部隊に異動となり、良くも悪くも私のような産業薬剤師になるケースもあるかも。

いずれにしても就職活動で必要なことは、まず第一に専門性試験対策です。

これは早めに国家試験の勉強を始めれば大丈夫です。

次に面接対策はよくある面接対策みたいな本を読んでおくことをオススメします。

また製薬会社で薬剤師と働く記事で紹介している就職活動の対策をやればバッチリです。

転職での就職

求人サイトから転職するパターンは、精神系病院、中小病院、療養型病院くらいしかほとんどありません。

ただ、人伝えに表に出回らないルートで大病院に転職の話がきたことがありますし、ホームページにこっそりと掲載されているのをみたことがあります。

また、過去に多大な実績を残した場合は、大病院にヘッドハンティングされることもあり得ます。

薬学を極めるべく日々研究を行い学会発表を繰り返すと共に病院薬剤師会の仕事もこなして顔を広げることが必要です。

転職エージェントに登録してもあまりいい情報はないかもです。

それよりかは希望する病院のホームページを巡回した方がいいでしょう。

転職試験はさっぱり情報がありませんから何とも言いようがありませんが、面接対策くらいは必要だと思います。

まとめ

診療所と病院の仕事、給料、ワークライフバランスの特徴や就職・転職時の注意点を紹介しました。

診療所はそもそも募集が多くありません。

診療所薬剤師といえば、院長の家族か私のような産業薬剤師という場合が多いと思います。

町医者の場合は給料はそれほど見込ませんし、有給は取りづらいでしょう。

産業薬剤師の場合は、就職先の企業の給料水準になるため、場合によってはかなり高給になることも。

病院薬剤師は、薬剤師の就職人気No1ですが、募集人数が少なく就職は難しいのが現状です。

研修生やバイトとして希望する病院で顔を売るのも手かと思います。

仕事量や求められる知識や技能に比べて給料は低くワークライフバランスもそれほどよくないでしょう。

安易な気持ちで就職することのないよう十分な下調べと自分のキャリアプランの検討をしましょう。

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