2007年の東京マラソンの開始をきっかけにマラソンを趣味にしている方が増えていると言われています。
統計局の調査ではマラソン人口は約700万人もいるとか!!
1kmとか3kmとかのランニングくらいであれば、いつもトレーニングをしていれば体への負担はそれほど大きくないとは思いますが、42kmも走るマラソンでは体の色々なところに負担がかかります。
ましてや100kmウルトラマラソンでは、その負担はとんでもないことになるでしょう。
一番負担がかかるのは、やはり足の裏、足首、膝などの足全体です。
それは痛みとなってあらわれるので、状態が悪くなると走るどころか歩くのすらままならなくなって、せっかくマラソン大会に出場したのに棄権するしかないことにもなりかねません。
足の痛みを少しでも軽減するために湿布を足に貼って走ることがあるようですが、私も聞いてびっくりしたのですがロキソニンなどの内服の痛み止めを飲んで走る方が多いとのこと。
湿布であれば部分的に効くだけのため問題にはなりにくいものの内服薬となると話は別です。
気持ちは分かりますが、予防で痛み止めをの飲んでマラソン大会に出るのはやめるべきと考えます。
なぜ内服の痛み止めをのんではいけないのか、そんな疑問にスポーツと薬に詳しい薬剤師「スポーツファーマシスト」が解説しましょう。
目次
マラソンなど激しい運動は内臓への負担が大きい
マラソンは足腰に負担がかかるのは体験されているとおりですが、実は内臓にも大きな負担がかかっています。
特に腎臓へのリスクはとても高くなります。
マラソンなどの激しい運動では筋肉がフル活動します。
筋肉をたくさん動かすことになるので、多くの老廃物が出来てしまいます。
腎臓は体の中の老廃物を血液からろ過して、体の外に出すのが主な機能であるため、激しい運動中は腎臓の活動レベルもハンパなく高くなります。
そして、大量の汗で失われた体内の水分がドロドロ血液を作り、腎臓のろ過の邪魔をして腎機能に大きな負担をかけてしまいます。
また、激しいで筋肉細胞が壊れ、その分解物も腎臓への負担をさらに上げてしまいます。
痛み止めは薬の中でも腎臓に影響を与えやすい
体の中に入った薬の多くは腎臓や肝臓を経由して排泄されます。
どっちのルートで排泄されるかで副作用も変わります。
肝臓ルートであれば肝臓に負担がかかるため肝臓への副作用が多くなりますし、腎臓ルートなら腎臓への副作用が高まります。
実は痛み止めは、薬の副作用で引き起こされる「薬剤性腎症」という腎機能が悪くなる症状の原因2位※なのです。(1位は抗生物質)
これは痛み止めは腎臓に負担がかかっているということ。
マラソン自体でも腎臓に負担があるところに、さらに薬で腎臓に負担がかかっていることになります。
痛み止めが腎臓によくない理由
少し専門的な話になりますが、痛み止めは「プロスタグランジン」というホルモンを働きを抑えることで痛みを感じにくくする作用があります。
腎臓の機能が低下し老廃物が体に溜まってしまっている時は、体は腎臓へ入る血管を広げて対応しようとするのですが、そのためにはプロスタグランジンが必要となります。
痛み止めが原因で腎臓の血管を広げることができないと腎臓の機能が十分に発揮できずに老廃物が体に溜まり、体を正常に維持することができなくなってしまいます。
同時に腎臓への血流が少なくなるため、腎臓が働くのに必要な酸素や栄養も十分届けることができなくなってしまい、腎臓機能をさらに低下させてしまうことになります。
こうした状態の時は、マラソン大会どころではなく、命に係わることにもつながります。
痛み止めを使うことによる腎臓以外への悪影響
痛み止めは、痛みの原因を治して痛くならないようにするのではなく、本来は痛いはずのものを痛く感じさせないようにする薬です。
「臭い物に蓋をする」という言葉がイメージに近いと思います。
痛みは、体がこれ以上負担をかけないでほしいという合図で、痛みによって無理をさせないようにしているにも関わらず、それを無視してしまってはいけませんよね。
通常なら走るのをやめなければいけないのに痛みを感じにくいがために無理できてしまって怪我をひどくしてしまうことだってあります。
マラソン時に服薬してはいけない痛み止めの商品名
アセトアミノフェンという成分以外の痛み止めは、腎臓に負担がかかりやすいことが知られています。
影響度の多少の違いますはあるとは思いますが、明らかな差はなくどの薬も同じように注意が必要です。
具体的には、医師が処方する医療用医薬品であればロキソニン、ボルタレン、セレコックス、アスピリン、ポンタール、ハイペン、モービック、ロルカムなどです。(ジェネリック医薬品も含めると数十種類以上あります!!)
市販薬では、ロキソニンS、イブ、バファリン、エキセドリンなどです。(市販薬の種類もたくさん!)
一方、唯一腎臓への負担がないアセトアミノフェン(医療薬:カロナール、市販薬:タイレノール)は肝臓に負担がかかりやすい副作用があります。
マラソンで内臓がダメージを受けている時には肝臓もフル活動していますので、体全体で考えればこの薬も飲むべきものではありません。
結局、全ての痛み止めはやめておきましょうってことです。
マラソンの時に痛み止めをのむ:まとめ
ランニング、マラソンブームを受け、東京マラソンなどの大会に出場される方も多いことでしょう。
海外からの論文では、マラソン大会出場者の半分が痛み止めを服用しているとされています。
日本でもそれが広がっているとか。
ロキソニンやイブなどの通常の痛み止めは、ドーピング禁止薬に該当しないためマラソン大会時に服用してもフェアプレーという意味では問題ありません。
しかしながら、特に腎臓に大きな負担がかかるマラソン時には、同じく腎臓への副作用リスクが高い痛み止めを服用すべきではありません。
さらには、原因は不明ですが、急性心筋梗塞や心不全などの心臓に関わるリスクも増加させるような話もあります。
マラソンはただでさえ日常とはかけ離れたことをするのに、さらに命に関わるリスクを上げることをしてしまってはいけません。
スポーツファーマシストが忠告します。
マラソン時には安易な痛み止めの服用はやめるべきです。
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