病院や調剤薬局などでの薬剤師は、その時代の最先端の仕事をして、日々薬剤師道に磨きをかけることが求められていますが、私のような産業薬剤師は少し異なります。
「産業薬剤師」とは企業内の診療所で薬剤師として働くことに加えて、保健師や看護師と一緒に社員の健康増進に関わる産業保健の仕事を行う薬剤師のこと。
医療を本業としていない会社で、社員が元気に働くためのサポートをする薬剤師です。(私の勤務先のメイン事業は機械関連)
そんな産業薬剤師の仕事内容や気になる年収や福利厚生などの待遇、この記事を読んで産業薬剤師に興味を持たれた薬剤師の方に向けて転職する方法も一緒にお伝えします。
また、その他にも薬剤師の就職先を紹介した記事がありますので良ければ参考にしてください。
目次
産業薬剤師の主な4つの仕事
- 社内診療所の薬局での調剤・投薬
- 職場に置く救急箱の物品の準備
- 海外出張・赴任者用の薬の手配
- 社員の健康増進施策やイベントの企画・運営
また私に関しては管理職としてのマネジメント業務もありますが、これに関しては産業薬剤師と関係なく管理職なら誰だってそうですよね。
4つの主な仕事をそれぞれもう少し詳しく解説します。
①社内診療所の薬局での調剤・投薬
医師の処方に基づいて調剤するのは、他の医療機関と同じです。
ですが、根本的に異なるところがあります。
それは多くの企業内診療所は、ちょっとした応急処置をするだけで、それ以上の治療が必要な場合は、しかるべき医療機関に迅速に搬送することが役目。
どんなに有望な治療法だろうが、企業診療所の守備範囲を超える治療法や薬は不要です。
エビデンスが蓄積されておらずリスキーな治療方法や薬も採用するわけにはいきません。
従って採用薬は、標準的な治療方法であり最も安全なものが選ばれます。
ありきたりな薬を調剤するだけですので、薬剤師らしさは少ないかもしれません。
②職場に置く救急箱の物品の手配
労働安全衛生法で、企業には応急処置をする救急箱を設置する義務があります。
救急箱に入れる物品の多くは医薬品のため、企業内診療所で薬剤師が手配することになります。
そのあとの各職場への配布、交換・補充の運営も担当します。
③海外出張・赴任者用の薬の手配
海外では環境や食べ物が体に合わず体調を崩しやすいため、薬に頼ることが多くなるのは想像のとおりです。
しかし、海外で薬がほしくても何を買ったらいいのか分からないし、何より現地の薬は日本人には成分量が多いことがあるので、できれば日本から持っていけると安心ですよね。
会社の命令で海外出張や赴任をすることになるので、安心して現地で仕事ができるようにするのが会社の責任であり、そのための薬を手配するのが薬剤師の大事な使命です。
また、海外には危険な感染症がありますので、抗生物質を事前に処方する会社もありますし、新型インフルエンザ対策としてタミフルなども持たせることも。
④社員の健康増進施策やイベントの企画・運営
社員の運動習慣づくり、食習慣の改善指導、生活習慣病患者やその予備群の方への研修やイベントなどの企画・運営も産業保健スタッフの大きな役割の一つです。
喫煙対策やメンタルヘルスケアも多くの会社で取り組んでいます。
健康であることは持てる能力を十分に発揮するための土台になりますから、生産性高く企業が成長するためには社員の健康は重要なファクターであり、人材育成として企業が投資すべき分野です。
こうした考えのことを「健康経営」と言い、経済産業省主導でここ数年盛り上がりを見せていて、今とても「アツい」分野です。
社員の健康増進に1ドル投資すると生産性向上やイメージアップが図られ3ドルのリターンがあるとの試算もあるくらいです。(こちらの3ページ目参照)
薬剤師は病気を持つ方に投薬して治療サポートをするのがメインの仕事ですので、予防活動に関わることは少し違和感があるかもしれませんが、やってみると奥が深くやりがいがある仕事です。
このような活動は働き方改革での残業低減・有休取得アップにもつながり、ホワイト企業として認知されますから会社もとても期待している分野です。
健康経営を進めている会社が具体的にどのような活動を行っているのかは、健康経営銘柄企業レポートが参考になります。
いい歳した大人が会社でこんなことをしているんですよ。どうです?楽しそうでしょ。
産業薬剤師の気になる年収、待遇
産業薬剤師は勤務先の社員になりますので、勤務先の給料体系に沿った年収であり、福利厚生の待遇を受けることができます。
なのでどこの会社で働くかで同じような仕事でも大きく給料や待遇が異なります。
給料水準の高い業界の産業薬剤師になれれば、そこの社員と同水準の高い給料がもらえることでしょう。
私の年収は、薬剤師のみならずサラリーマンならまず目指したい桁の年収があります。勤務先の給料水準が高いのと管理職ということ要因です。
部下の薬剤師でも調剤薬局の管理薬剤師よりももらっているはずです。エリアマネージャーくらいかな。
給料以外の福利厚生や待遇は、別記事でまとめてありますのでよければ参考にしてみてください。
産業薬剤師として就職・転職する方法
産業薬剤師を募集する企業は、社内に診療所があってある程度の量の薬が処方される会社が想定されます。
そのため、ある程度の社員数がいる大企業であることが多いでしょう。
これまでに紹介したとおりで、産業薬師は薬が関わること以外にも幅広く仕事をこなす必要がありますので、即戦力が求められ中途採用がメインとなります。
但し、即戦力といっても年齢を重ねている方は除外されるケースが多いでしょう。
企業は給与体系がきっちり決まっていますし、年功序列的な人事制度であることが多く、給与面や人事処遇の面でどう扱ったらいいのか分かりにくい方は中途採用の対象にはできません。
35歳くらいまでではないかと推測されます。
健康経営が話題の分野だからといっても増員はなかなか難しく欠員補充になるケースが多いのではないかと考えられます。
まずはどの企業に薬剤師が在籍しているのかを卸やメーカーに聞いておき、採用情報のアンテナを高く張っておきましょう。
新聞やちらしの求人コーナーで募集を見かけたことがあります。しかも地域限定で掲載することがあるので、入りたい企業があるようだったら家族や友人などにも言っておくといいと思います。
当然ながら転職サイトには登録しておくべきです。
産業薬剤師を採用するような大企業は大手の転職サイトしか利用しません。
リクナビやマイナビといった大手の薬剤師転職サイトには必ず登録するようにしましょう。
まとめ
社員が元気に安心して働けるようにサポートをするのが産業薬剤師です。
主な仕事は次の4つ。
- 社内診療所の薬局での調剤・投薬
- 職場に置く救急箱の物品の準備
- 海外出張・赴任者用の薬の手配
- 社員の健康増進施策やイベントの企画・運営
薬に関連することがメイン業務になることは間違えありません。
しかし、それ以外にも病気で会社を休まないようにする、体が不調で能力を十分発揮できない状態にさせないようにするための予防活動の企画運営にも携わります。
とてもやりがいのある仕事です。
それに産業薬剤師を雇うような会社は、ほぼほぼ大企業ですので、勤務先の水準通りの給料や福利厚生などの待遇を受けられることになります。
ただし採用がなかなかないのが残念なところ。
卸、メーカー、家族や知人に声をかけておくこと、新聞やちらしをチェックをすること、大手の薬剤師転職サイトに登録しておくことが必須です。
そしていつそのような求人があってもいいように幅広い医学・薬学の知識はもちろんのこと、企画提案力を養っておこう!
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