麻黄湯(まおうとう)はタミフルなどの抗インフルエンザ薬と同等の効果があるとした報告もあるくらいで、インフルエンザ患者に麻黄湯を処方する医師が増えていたり、薬局・ドラッグストアでは市販の麻黄湯が積極的に売られています。
漢方薬は副作用がなくて「安全」と思われていることが多いですが漢方薬だって薬です。
冬にドラッグストアに行くと入ってすぐに陳列されており、ついつい手に取ってしまわれないでしょうか。
麻黄湯を服用するに当たってはいくつか注意すべき点があります。
効果が期待できる人とそうでない人がいます。購入する前・服用する前にぜひ読んでいただきたく紹介します。
目次
麻黄湯とはどういう薬?
漢方薬は「生薬(しょうやく)」が複数混ざった薬です。
生薬とは天然に存在する薬効を持つ植物や動物由来(一部鉱物なども有り)のものを乾燥させたものです。
構成する生薬の種類や混合割合によって「葛根湯(かっこんとう)」、「麻黄湯(まおうとう)」「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」などの名前が付けられています。
麻黄湯を構成する生薬は次のとおりです。
生薬名 | 混合比率 | 薬効 |
麻黄(マオウ) | 4.0 | 咳を抑える、発汗作用、利尿作用 |
桂皮(ケイヒ) | 3.2 | 体を温める、麻黄の発汗作用を補助 |
杏仁(キョウニン) | 4.0 | 麻黄と共に肺に働いて咳を鎮める |
甘草(カンゾウ) | 1.2 | 麻黄・桂皮による発汗で消耗する気力を補う |
麻黄湯のインフルエンザへの効果
生薬の「麻黄」に含まれる成分「タンニン」がウイルスを弱らせ、「桂皮」に含まれる成分「シンナムアルデヒド」がウイルスを攻撃することが明らかにされています。
タミフルなどの抗インフルエンザ薬とは異なる作用の仕方をします。
ですが、麻黄湯を飲めば全員がインフルエンザから早く解放されればいいのですが、そうではないのが残念なところ。
服用できる人、服用はやめた方がいい人とがいます。
麻黄湯の服用がピッタリ合う人
漢方薬は同じ薬でも効果がある人・ない人があります。
それは、漢方薬の種類と体質やその時の症状・状態によって効果が変わるためです。
麻黄湯では、タンニンやシンナムアルデヒドによるウイルスへの効果も期待できるのですが、漢方薬による総合的な力でウイルスに打ち勝つ体質へと変化させることで効果を発揮<します。 その効果を得るには、紹介したとおりで最適な体質や症状であることが重要となります。
具体的には麻黄湯は、「発汗が無く体力があり胃腸が丈夫な人」が最も適しています。
そうでない状態の時に服用しても本来の麻黄湯の持つ力を得ることができません。
麻黄湯を服用が適さない、服用しない方がいい人
麻黄湯が服用できない人とは、服用が適する人の逆の人のことです。
それは「汗をたくさんかいている、起き上がれない程弱っている、下痢をしている」ということ。
こういった方は、効果があるどころか逆に状態が悪くなる可能性があるので要注意。
インフルエンザにかかっても毎回同じ症状になるとは限りませんから、飲める時、飲めない時があります。
妊娠中の方は服用しない、授乳中の方は注意しよう
妊娠中に調子が悪い時は、漢方薬を使うことが結構ありますが、自己判断で服用はやめましょう。
面倒でもかかりつけの産婦人科を受診するべきです。
あと予防を十分行うことも大切。予防の基本は手洗いとうがいで、次の記事が参考になります。
麻黄湯を服用する直前に授乳をして、服用後は4時間以上間隔を空けてから次の授乳をすれば大丈夫です。
そのくらい時間が経てば授乳直前に服用した分は、薬の効果が得られないほどに分解されて体の外に排出されているためです。
麻黄湯でのその他の注意点
麻黄湯は体を温めて汗を出す作用があるため、解熱剤で体温を下げてしまうことは避けるべきです。
麻黄湯を服用する場合は、パブロンとか通常のかぜ薬やバファリンなどの解熱鎮痛剤とは一緒に服用できません。東洋の漢方薬か、西洋の風邪薬かのどちらかにしてください。
頭や喉の痛みがひどい時は、西洋の解熱鎮痛剤の方が効果を実感できると思います。オススメ市販薬は次の記事が参考になります。
風邪薬のオススメ市販薬は次の記事が参考になります。
全国レベル以上のスポーツ選手も麻黄湯はダメ
麻黄湯に含まれる麻黄の主成分「エフェドリン」は、ドーピング禁止物質です。
ドーピング検査を受ける可能性がある全国レベル以上のスポーツ選手は、麻黄湯を絶対に服用してはいけません。
検査でひっかかれば、選手生命を脅かすことになります。
麻黄湯はエフェドリンを含むので明らかにダメですが、そもそも漢方薬にはどんな成分が含まれているか分からないため、スポーツ選手は漢方薬は服用しないようにしましょう。
栄養ドリンクも漢方薬が入っていることがありますので要注意!
セルフメディケーション税制の対象品
市販薬を購入すると税金が安くなる「セルフメディケーション税制」という制度が2017年1月から始まりました。
対象になる市販薬は「○」、対象にならない市販薬は「×」で示します。
市販薬名 | 対象 |
麻黄湯 | × |
※2017年10月時点
まとめ
インフルエンザに効果があると考えられている漢方薬の「麻黄湯」について薬剤師が解説しました。
漢方薬は副作用がなく誰でも安全に効果良く使用できると考えられがちです。
しかし、漢方薬の特徴と服用する人の体質や症状がバッチリ合わなければ十分な効果は得られません。
麻黄湯も誰でも同じように効くとは限りません。
起き上がれない・下痢をしているなど、弱っている方は、麻黄湯を服用するのではなく病院を受診してインフルエンザに効く西洋の薬を処方してもらうようにしましょう。
麻黄湯の服用が適する人でも服用後3日経ってもよくならなければ、病院受診をするようにしてください。
次の記事で薬効別にオススメ市販薬を紹介しています。麻黄湯以外の市販薬は次のリンクか、画面上部のメニューボタンからチェック!
コメントを残す